【65歳以上・無職夫婦世帯】1か月の生活費はいくら?「平均貯蓄額・内訳・年金月額」を確認(2024年9月16日『LIMO』)

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写真:LIMO [リーモ]
物価の上昇が続いており、経済対策として8月・9月・10月に電気・ガス代の補助が実施されていますが「日々の生活が苦しくなってきている」と感じている方は多いのではないでしょうか。
◆【グラフ】65歳以上・夫婦世帯の平均貯蓄額はいくら?資産の内訳もチェック
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とくに年金受給世帯は、収入が年金だけに限られているケースも多く、これまでの貯蓄を取り崩しながら老後の生活を過ごされている方もいらっしゃいます。
筆者はファイナンシャルアドバイザーなのですが、普段から個人の老後資金に関するご相談を数多く受けています。
現役世代の方からは、「老後の生活のイメージはつかないが、とにかくお金の面で不安」といった声を聞くことが多いです。
将来にむけて「老後どれくらいの年金をもらえるのか、どれくらいの生活費がかかるのか」がわかると、資産形成を行うのに役立ちます。
そこで今回は、65歳以上の無職世帯の貯蓄事情と家計収支をチェックしていきます。
将来資金や老後生活に向けた準備を検討する際に、ぜひお役立てください。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
「65歳以上・無職夫婦世帯」平均貯蓄額はいくら?
総務省の調査によると、65歳以上で無職の夫婦世帯は「平均貯蓄額が2504万円」でした。
平均貯蓄額の推移は、以下のとおりです。
●2018年~2023年までの「平均貯蓄額の推移」
 ・2018年:2233万円
 ・2019年:2218万円
 ・2020年:2292万円
 ・2021年:2342万円
 ・2022年:2359万円
 ・2023年:2504万円
上記グラフをご覧いただくとわかるとおり、2018年~2020年までの平均貯蓄額は2200万円台でした。
2021年からは、平均貯蓄額が2300万円に上昇しています。
さらに、2023年には平均貯蓄額が2500万円台にのぼりました。
急速な少子高齢化により、年金財政が不安定化していることも踏まえると「貯蓄額を増やした方が安全なのではないか」と考えるのはもっともです。
しかし、実生活においては物価高の影響もあり、生活費の支出増により貯蓄額が増えたという実感は得られにくい傾向にあります。
では、銀行預金以外の貯蓄はどうでしょうか。
次章で、保有資産の内訳を見ていきましょう。
保有資産の内訳
合計:2504万円
 ・有価証券:480万円
 ・生命保険など:413万円
 ・定期性預貯金:846万円
 ・通貨性預貯金:754万円
 ・金融機関外:11万円
65歳以上で無職の夫婦世帯における、保有資産の平均合計額は2504万円です。
有価証券の保有額は480万円となっており、前年比+80万円と大きく増加していることわかります。
定期性預貯金は846万円で、前年と比べ19万円減少しました。
つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)など、「税法上の優遇がある制度」も知られるようになったため、貯蓄から投資への動きは今後も加速していくと考えられます。
ここまで65歳以上の無職世帯における、貯蓄額や内訳をご紹介しました。
次章では、65歳以上の「勤労世帯も含む」世帯の貯蓄額を見ていきましょう。
65歳以上「働くシニアも含めた」全体の貯蓄額平均
ここからは、総務省統計局による「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」をもとに、働くシニアも含めた「世帯主が65歳以上の貯蓄額」を見ていきましょう。
●平均・中央値|65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額
 ・平均:2462万円
 ・貯蓄保有世帯の中央値:1604万円
総務省統計局によると、65歳以上世帯の貯蓄額は「平均で2462万円」となっており、「中央値は1604万円」でした。
老後の生活のために、65歳以降も年金を受給しながら働いている世帯もあるでしょう。
働くシニア世帯は、無職世帯と比べ貯蓄の切り崩しが少なく済む傾向にあります。
働くシニアも含めた「世帯主が65歳以上の貯蓄額」を見てみると、貯蓄額2500万円以上が34.1%いる一方で、貯蓄額300万円未満の世帯は15.1%。
つまり、貯蓄額が二極化しているのが現状です。
現在、65歳以上の人が一定の収入を得ると年金が減額される仕組みの見直しなどが検討されています。
年金は老後生活を過ごすうえで大切なものなので、減額されると困るという方は多いのではないでしょうか。
次章では「65歳以上・無職夫婦」の1ヵ月の生活費について見ていきましょう。
1ヵ月の家計収支「毎月約4万円の赤字」|65歳以上無職夫婦
続いては、総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」より、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ていきます。
●毎月の収入|65歳以上・夫婦のみの無職世帯
 ・収入合計:24万4580円
 ・うち社会保障給付(主に年金)21万8441円
●毎月の支出|65歳以上・夫婦のみの無職世帯
 ・消費支出:25万959円
 ・うち食料:7万2930円
 ・うち住居:1万6827円
 ・うち光熱・水道:2万2422円
 ・うち家具・家具用品:1万477円
 ・うち被服及び履物:5159円
 ・うち保健医療:1万6879円
 ・うち交通・通信:3万729円
 ・うちその他:5万839円
 ・非消費支出:3万1538円
支出合計28万2497円
●毎月の収支|65歳以上・夫婦のみの無職世帯
65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、収入合計が24万4580円です。
支出合計は28万2497円となっており、毎月の赤字額が3万7916円で「約4万円の赤字」が出ています。
収入のうち、社会保障給付はおよそ21万円です。
生活費で不足する分は、貯蓄から出す必要があります。
今後、物価の上昇や年金額の目減りなどが予想されており、人生100年時代を安心して生きるためには金銭的不安に対して何らかの対策をした方がよいでしょう。
平均では、夫婦の合計で年金21万8441円となっています。
しかし実際には、現役時代の報酬や加入期間などが影響するため、個人差があることにも留意してください。
では、現在の「厚生年金と国民年金」はいくらになっているのでしょうか。次章で詳しくみていきます。
国民年金・厚生年金「我が家はいくらになる?」モデル年金額でシミュレーション
2024年度の年金額は、2.7%の増額となります。
国民年金は「満額で6万8000円」、厚生年金は「標準的な夫婦合計で23万483円」となりました。
標準的な夫婦として、以下の条件で試算されています。
 ・夫が平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で 40年間就業
 ・老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)
前述した「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」における毎月の家計収支を考えると、年金だけで老後の生活を過ごすのは厳しいことがわかります。
昨今、共働き世代が増えていることも踏まえ、厚生労働省は「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」で以下のような複数パターンのモデル年金額を提示しています。
●単身世帯の年金例
 ・報酬54万9000円:18万6104円
 ・報酬43万9000円:16万2483円
 ・報酬32万9000円:13万8862円
 ・報酬37万4000円:14万8617円
 ・報酬30万000円:13万2494円
 ・報酬22万5000円:11万6370円
 ・報酬14万2000円:9万8484円
●夫婦世帯の年金例
 ・夫が報酬54万9000円+妻が報酬37万4000円:33万4721円
 ・夫が報酬43万9000円+妻が報酬30万000円:24万9777円
 ・夫が報酬32万9000円+妻が報酬22万5000円:25万5232円
 ・夫が報酬54万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:28万4588円
 ・夫が報酬43万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:26万967円
 ・夫が報酬32万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:23万7346円
 ・妻が報酬37万4000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:24万7101円
 ・妻が報酬30万000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:23万978円
 ・妻が報酬22万5000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:21万4854円
 ・夫婦ともに短時間労働者だった場合の平均的な収入:19万6968円
 ・夫が報酬54万9000円+妻が国民年金のみ加入:25万4104円
 ・夫が報酬43万9000円+妻が国民年金のみ加入:23万483円
 ・夫が報酬32万9000円+妻が国民年金のみ加入:20万6862円
 ・妻が報酬37万4000円+夫が国民年金のみ加入:21万6617円
 ・妻が報酬30万000円+夫が国民年金のみ加入:20万494円
 ・妻が報酬22万5000円+夫が国民年金のみ加入:18万4370円
働き方や収入、年金の加入期間などによって、受給できる年金額が変わってきます。
そのため、世帯ごとに受け取れる年金額の目安は異なります。
ご自身の年金額について「もっと具体的な詳細を知りたい」という方は、ねんきんネットやねんきん定期便を確認してみるとよいでしょう。
まとめにかえて
今回は65歳以上の貯蓄額や、毎月の家計の収支について確認しました。
物価上昇が続いており、「安心した生活を送るにはしっかりとした準備が必要」と思われた方も多いのではないでしょうか。
少子高齢化などが懸念されており、将来の年金の見通しも不透明な傾向にあることから、早めに老後の準備をはじめることが大切だとされています。
老後資金の準備といえば、資産運用を思いつく方も多いかもしれません。
将来や老後に向けた資産形成を考える際は、2024年度から制度が新しくなったNISAや、「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」といった国が推奨している税制優遇制度の活用を検討するとよいでしょう。
しかし、資産運用を行う場合、リターンが期待できるだけでなくリスクが伴うことも忘れてはなりません。
家計の収支や、将来受給できる予定の年金額など確認したうえで、余剰資金を用いて資産運用を検討するようにしましょう。
まずは、将来に向けて「どのような準備が必要なのか」確認することからはじめてみてはいかがでしょうか。
 
参考資料
 ・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
 ・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
 ・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」
 ・厚生労働省「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」
 ・厚生労働省国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー令和6 <2024> 年財政検証結果ー」
 ・内閣府「高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第8回)」
西村 翼