自民総裁選、党員調査衝撃の中身 数字上は2人の決選投票だが…河野氏は低迷 有元隆志(2024年9月8日『産経新聞』)

東京・永田町の自民党本部にある総裁の執務机と椅子。誰がここに座るのか

自民党総裁選(12日告示、27日投開票)をめぐり、候補者の政策アピールが過熱してきた。小泉進次郎環境相(43)がスタートアップ(新興企業)支援で税制優遇の検討を語った一方、石破茂元幹事長(67)は「増税路線」である金融所得課税の強化を、茂木敏充幹事長(68)は防衛増税の停止などを打ち出して、対立候補から批判を浴びている。次期衆院選も見据えて、総裁選の争点は今後絞られそうだ。こうしたなか、産経新聞特別記者の有元隆志氏が「自民党員を対象にした調査結果」を入手した。国会議員票に影響する党員の意識傾向に迫った。

石破茂

自民党総裁選を前に、ある調査機関が実施した党員を対象にした意識調査の結果を入手した。候補者が出そろっていない段階での調査ではあるが、一般向けの世論調査ではなく「党員のみ」を対象にしているので紹介したい。

調査は全国の党員1500人を対象に、8月10日と22日に実施された。22日の調査で投票先として最も高いのは石破氏で36・4%だった。小泉氏23・6%、高市早苗経済安保障相(63)13・1%、小林鷹之前経済安保相(49)10・4%と続いた。

今回の総裁選は候補者の乱立で、これまで以上に党員・党友票の重みが増している。国会議員票で主要候補の差がつかず、党員票の結果で決まるとしたら、この数字だけをみると石破氏と小泉氏の決選投票ということになる。

10日の調査では、石破氏が34・8%、高市氏が15・6%、小泉氏が14%で、小林氏はわずか1・9%だった。8月19日の出馬表明を受けて小林氏支持は8・5ポイント上昇した。出馬の意向を固めた小泉氏も9・6ポイント伸ばした。

自民党内では、主要閣僚や党幹部を経験していない小泉、小林両氏の「経験不足」への懸念は根強い。懐疑的な見方に対し、小林氏は出馬会見で「鷹は古い羽根を新しい羽根に換える習性を持っている。自民党も新しい羽根が必要な時期を迎えている」と強調した。

高市早苗
小泉進次郎

石破氏には過去4回総裁選に出馬し、地方遊説も小まめに行っているので底堅い支持がある。ただ、22日のクロス集計を見ると、自民党員でありながら次期衆院選で「立憲民主党など野党に入れる」と答えた人の中で、他候補を大きく引き離して支持を集めているのが石破氏だった。

立憲民主党に入れる」と答えたのが8・5%いたが、その中で石破氏支持が68・3%で、2位が小泉氏の10・6%だった。「政治とカネ」をめぐり「自民党は反省をどこかで忘れてしまったのではないか」と述べるなど、党への批判を厭(いと)わない石破氏の姿勢が支持を集めているようだ。

河野氏「低迷」顕著

上位4人以外では、林芳正官房長官(63)5・8%、河野太郎デジタル相(61)4%、茂木氏3・3%となっているが、「河野氏の低迷ぶり」が顕著だ。

出馬会見で、河野氏は「かつては『河野太郎さん1位』ということもあった。残念ながら少し数字が悪くなっておりますが、デジタル化を進めていく上であったり、いろんなことが影響しているのかな」と語った。

X(旧ツイッター)上で一般ユーザーをブロックし、国会答弁で「所管外」を繰り返すなど、河野氏の資質を疑問視する見方が広がっていることも要因としてあるだろう。

各候補は「差別化」を打ち出そうとしているが、石破氏は2日のBS日テレ番組で「金融所得課税の強化」について「実行したい」と述べた。総裁選の後にはすぐに衆院の解散・総選挙があるとの観測が強まるなか、課税強化を打ち出した石破氏への反発は広まるのかどうか。

告示を経て、党員の動向がどのように変化するか注視していきたい。

有元隆志

ありもと・たかし 産経新聞特別記者。1965年、神奈川県生まれ。学習院大学法学部卒業、89年、産経新聞社入社。ワシントン特派員、政治部次長、編集局副編集長、政治部長を歴任。今年6月まで、フジサンケイグループの理論的支柱である月刊誌『正論』の発行人兼調査室長を務める。主な著書に『歴史戦』『日本共産党研究』(産経新聞出版、共著)など。