9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選
自民党総裁選が9月12日告示、27日投開票、野党第1党の立憲民主党代表選が同7日告示、23日投開票と決まった。現職の岸田文雄総理(67)は不出馬退陣が決まっており、10月召集の臨時国会で自民党新総裁が第102代内閣総理大臣になるのが確実。「政治とカネ」で支持率の低迷が続き、退く岸田総理に代わる新たなリーダーは誰? 読み解くと同時に今後の展開を予想してみよう。
カネとポストの源泉
自民党総裁選は同党所属の国会議員と党員・党友だけの選挙。これは立憲民主も同じ。どちらも立候補するには自身を除く所属国会議員20人の記名推薦人が必要となる。自民367人、立憲136人の同僚議員の中から推薦人を確保するのは数字で見るほど簡単ではない。推薦候補が勝てば重用されるが、負ければ冷や飯を覚悟しなければならないからだ。
自民党ですでに立候補表明した者や、可能性ある議員は別表10人。推薦人20人だから立候補者10人なら自民は数字上全員が立候補可能。立憲も推薦人20人以上が条件だから、こちらは他議員の立候補ハードルが高い。
自民党の選挙管理委員会(選管)は世論を考慮して「金の掛からない選挙」を呼びかけているが、運動期間中は街頭などで派手に選挙戦を繰り広げ、投票権のない一般市民にもアピールして〝総選挙前哨戦〟を演じることになる。公選法(公職選挙法)が適用されないから、期間中に週刊誌などでスキャンダルが出る危険性もあるし、裏金・旧派閥ボスとの関係などを暴かれるリスクも。それでも多くが手を挙げる背景には、近づく選挙に向け「自分は総理総裁を目指す人物」のアピールになるから。総理になれなくても、党要職や閣僚に就ければカネと利権が向こうから寄ってくる。
刷新なら「若手・女性・石破」
実際の総裁選は国会議員票367(50%)と地方票367(50%)で争う。運動期間は今回15日間。1回目で過半数を獲得すればそれで終了だが、いなければ決選投票で1回目の上位2人が国会議員票367(89%)と地方票47(11%)で争う。つまり1回目は地方人気がものを言うが、決戦になると国会議員支持が全てとなる。
岸田人気が低迷していただけに、所属議員の本音は「『政治とカネ』や『統一教会』は総理退陣で幕引き。新総裁で党の刷新感を出し、総理就任後は即総選挙」が思惑。前回の総選挙も岸田政権が誕生した直後で、与党の圧勝だった。
新政権の看板スローガンは「党の改革刷新」。それを体現するには「若手・女性・石破」が一番分かりやすい。若手の小泉・小林いずれか、史上初の女性総理、もしくは党内不人気ナンバーワンの石破が総裁になれば「自民党は変わりました」感を演出できる。
立候補者多数になればなるほど1回目で決着するのは困難。制度上初めて派閥の締め付けが効かない初の選挙だけに、2回目投票の対象となる上位2人を予想するのは極めて困難。上記3条件にあてはまる人物が一人でも残れば、国会議員がなだれを打って地滑り的勝利へひた走る可能性が高い。
姿隠して「長老」横行
〝金とポスト〟を求めた議員はこれまで派閥に属していた。1月の裏金問題の処理まで自民には旧態依然とした6派があった。100人近い安倍派を筆頭に麻生派、茂木派、岸田派、二階派が50~30人ずつ、最小の森山派8人。他に菅義偉・元総理(75)ら無派閥議員が90人いた。それがパーティー券裏金問題で麻生派を除き全て解散。派閥トップは「長老」と呼ばれ、表に出ないボス支配に移行した。
総裁選への立候補者が支援を求めるキングメーカーの筆頭は麻生太郎・元総理(83)、菅・元総理、そして岸田総理自身。前回、岸田候補を支援した最大派閥のトップ、安倍晋三・元総理は2年前の夏に67歳で没した。二階俊博・元幹事長(85)も裏金問題での引退表明で議席世襲を画策し力を失った。麻生・元総理も議席世襲により総選挙前に引退の可能性が高い。
そう考えると2世代若い岸田総理が不確定要素の高い次期総裁選、解散総選挙で敗北するリスクを避け、先手を打って総理引退の道を選んだ理由も透けてくる。
立憲は「政策」闘争
立憲民主党はもっと分かりやすい。現在の泉健太代表(50)は中道。立候補を表明した枝野幸男・前代表(60)は左派、野田佳彦・元総理(67)は右派。つまり党内のイデオロギー対立。泉代表はこの3年間、維新や国民民主などの右派政党から左派の共産党までうまく横断的に接触し党勢を伸ばしてきた。枝野・前代表は岸田総理発足時に総選挙で大敗し辞任。野田・元総理は消費増税を画策し、解散総選挙に出て政権を失った張本人。
〝壊し屋〟小沢一郎・元生活の党代表(82)の裏で画策が報じられているが、常識的に見れば「誰が党代表にふさわしいか?」は、おのずと分かる。
最後決めるのは国民自身
岸田総理は総裁選不出馬の会見で「今度こそオール自民党でドリームチームを作って信頼回復を」と説いた。逆に言えば各派閥に気がねしながらやってきた立場を認めた。