解散方針を決めた自民党安倍派(清和政策研究会)が、党総裁選(9月12日告示、27日投開票)を巡る対応で分裂している。派閥のパーティー収入不記載事件で同派幹部が軒並み処分され、司令塔を失った所属議員は複数の陣営に散らばった。事件を思い起こさせかねないとして安倍派議員の支援を敬遠する陣営もある。栄華を誇った最大派閥の面影はない。
8月28日夕、東京・赤坂の議員宿舎に安倍派の福田達夫筆頭副幹事長や大西英男衆院議員ら中堅・若手約20人が集まり、政治学者の講演に耳を傾けた。毎年夏に行われていた派閥研修会を再現しようと有志が企画し、夜には懇親会もあった。
出席者によると、総裁選での特定候補の支援に関する話題は出なかったという。不記載事件で派内の有力者「5人衆」が処分された結果、派として足並みをそろえることは困難になった。会合後、中堅議員は「それぞれ向いている方向が異なり、とても一本化できない」とぼやいた。
安倍派のうち福田氏ら中堅・若手の一部は小林鷹之前経済安全保障担当相(49)の支援に回った。石破茂元幹事長(67)や高市早苗経済安保担当相(63)、上川陽子外相(71)の陣営に入った議員もいる。小泉進次郎元環境相(43)や茂木敏充幹事長(68)らの支援を検討する動きもある。
今回の総裁選は10人以上が出馬に意欲を示す乱戦模様で、推薦人確保のためにも最盛期は100人を超えた安倍派の取り込みは重要といえる。
ただ、不記載事件の記憶が鮮明に残る中、安倍派議員が前面に出れば、「候補のマイナスイメージとなりかねない」(閣僚経験者)との声がある。このため、安倍派議員に表立った支援を控えさせ、推薦人名簿から外そうとする陣営もある。
それどころか、処分を受けた安倍派議員らを次期国政選挙で「非公認」とする可能性に言及する候補もいる。安倍派若手は「勝ち馬を間違えたら、いつまでたってもいじめられる」と危機感を強めている。(竹之内秀介)