9月の自民党総裁選が一気に乱立模様となってきた。
出馬が取り沙汰されるケースも含めれば、「ポスト岸田」候補は10人程度となる。派閥の締め付けが緩んだことで、立候補に必要な推薦人20人を各候補は自前で確保する必要に迫られ、水面下でつばぜり合いが繰り広げられている。
「複数の同僚から話をもらっているのは事実。それ以上コメントすることはない」。小林鷹之前経済安全保障担当相(49)は17日、新潟県燕市で記者団から推薦人確保の状況を問われ、手の内を明かすのを避けるかのように言葉を濁した。
20人の推薦人確保にめどを付けた小林氏だが、支持の中心は所属する二階派ではなく、派閥裏金事件の震源となった安倍派の中堅・若手や無派閥議員ら。一方、二階派や安倍派の一部には小泉進次郎元環境相(43)への待望論もあり、小林氏陣営からは「告示日までに他陣営に切り崩されるかも」と懸念の声が漏れる。
茂木派では、加藤勝信元官房長官(68)が出馬を検討している。15日には安倍派に一定の影響力を持つ萩生田光一前政調会長に協力を要請。森山裕総務会長の支援を期待し、茂木派内でも支持拡大を狙う。自派閥固めを図ろうとしていた茂木敏充幹事長(68)は17日、訪問先の金沢市で総裁選対応について「夏の間考える」と言葉少なに説明。予定を切り上げて帰京を急いだ。
にわかに乱戦の様相を呈する総裁選に、早くから「ポスト岸田」として名前の挙がってきた面々からは焦りの色もにじむ。2021年総裁選で小林氏が推薦人に名を連ねた高市早苗経済安保担当相(63)は、自らの支持基盤となってきた保守層の亀裂を警戒。17日、奈良市内で講演した際、出席者によると、「候補乱立を受け、推薦人の引きはがしにあっている」と危機感をあらわにした。石破茂元幹事長(67)は推薦人確保の見通しが立ちつつあると明かしたが、茂木派の切り崩しにも動いている。
候補が乱立すれば推薦人確保のハードルは高まる。自民関係者は「世論の支持が伸び悩めば、告示までに勝ち馬に乗ろうとする議員心理も働くだろう」として、駆け引きが激化するとの見方を示す。実際出馬できるかどうかは「ポスト岸田」候補にとって今後の政治的影響力も左右しそうだ。