9月1日は「防災の日」。今年は1月の能登半島地震に始まり、8月には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」も発表された。災害時用トイレを含め、遅れがちだった各家庭での防災の備えへの意識の高まりもみられるようになった。
政府は南海トラフ地震臨時情報を8月8日に出した。その直後の14日から17日までの4日間、チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」を運営するロコガイド(東京都港区)が防災意識に関するアンケートを実施した。
全国の「トクバイ」ユーザーを対象にインターネットを通じて調査し、1900人から回答を得た。「臨時情報発表後に備えたこと」を尋ねた項目(複数回答)では、「自宅での災害用備蓄の確認・追加」が46・5%で最も多く、「避難場所・避難経路を確認した」23・1%、「ハザードマップを確認した」22・0%と続く。「何もしなかった」は13・7%だった。
自宅で備えている防災用品について複数回答で尋ねたところ、「懐中電灯」が85・5%と最も多く、「カセットコンロ」53・6%、「予備電池・非常用バッテリー」48・9%と続いた。
一方、「簡易トイレ」は33・6%だった。3人に1人が簡易トイレを備えているとの結果だ。
単純比較はできないが、一般社団法人「日本トイレ協会」(東京都文京区)が2023年に実施したアンケート調査では、家庭で災害時用トイレを備蓄している人は22・2%だった。
日本トイレ協会によると、8月8日の臨時情報発表後はホームセンターで簡易トイレの品切れが相次ぎ、協会に加盟するメーカーの中には在庫が払底する企業もあったという。
簡易トイレの備えを含め、防災意識は高まっているのだろうか。
日本トイレ協会の災害・仮設トイレ研究会の事務局長、砂岡豊彦さんは「今年は災害を身近に感じる機会が多い」と指摘する。簡易トイレについては「『まさか自分が当事者になることはない』と思っている人が多いのでは」といいつつ、「水があれば食べなくても数日は耐えられる可能性がある。だけど排せつは一日も止めることができない」と、対策の重要性を訴えた。
トイレ問題は「最大の課題」
日本トイレ協会は簡易トイレなどで「1人1日あたり5回を7日分」確保することを勧めている。
16年の熊本地震をきっかけに災害時用トイレの商品開発を進めたという福岡商事(福岡市)は「トイレの女神PREMIUM」という凝固剤付き携帯トイレを販売する。事業責任者の安藤成希さんは「避難生活ではトイレ問題が最大の課題」と話す。
一方、災害時危機管理に取り組む企業C-SOS(東京都目黒区)が開発した組み立て式便器「便王(ベンキング)」は本体が発泡スチロール製で停電時も便座が冷たくないという。処理袋や凝固剤などがセットになっている。
同社代表で一般社団法人「全国簡易トイレ普及協会」(同区)の代表理事を務める地村健太郎さんは「排せつを我慢すると命に関わる。自分専用のトイレを確保することで、プライバシーの保護や性犯罪抑止、高齢者福祉にもつながります」と話している。【山崎明子】