外国籍の子供 日本語教育の充実が急務だ(2024年8月28日『読売新聞』-「社説」)

 外国籍の子供たちが日本社会に溶け込んで暮らすには、一定の日本語能力が欠かせない。「言葉の壁」を取り払う支援体制の整備を急ぎたい。
 公立小中高校などで、通常の授業とは別に日本語指導が必要な外国籍の児童生徒が昨年度、過去最多の約5万8000人となった。日本国籍でも、外国生活が長いなどの理由で指導が必要な子供も1万1000人を超えた。
 子供を含めた在留外国人の数は、約341万人に上る。多国籍化が進み、居住地も各地に広がっている。国は労働力不足を補うため、海外人材の受け入れを進めている。日本で生活する子供は、今後も増えていくだろう。
 日本は外国人との共生が不可欠な社会になった。親と一緒に来日した子供の場合、高校を卒業すれば、就労制限のない在留資格が得られる。長く暮らしていけるよう、必要な日本語能力を身につける機会を提供することが重要だ。
 乗り越えるべき課題は多い。日本語指導が必要な外国籍の子供の90・4%は、実際に学校で指導を受けているが、2年前より0・6ポイント減少した。子供の増加に指導体制が追いつかないためだ。
 学校に通っていない「不就学」の可能性がある子供も、約8600人いるという。
 指導が必要な外国籍の子供は高校や大学への進学率が低く、高校中退率も高い。十分な日本語能力がないことが一因ではないか。
 多国籍化への対応に苦慮している自治体は少なくない。
 1990年代から日系ブラジル人が増えた群馬県大泉町は、小中学校にポルトガル語の支援員を配置し、指導体制を整えてきた。しかし、近年はネパールやベトナムから来た人らが増え、多様な言語への対応が必要になっている。
 政府は、教員志望の大学生に日本語指導の単位取得を促すなど人材確保の支援を強化すべきだ。
 地域には、海外勤務が長く語学に 長た けた人もいるだろう。これらの人や民間の国際交流団体などの力も借りて、日本語教育の充実を図りたい。
 人材を確保できず、少数言語による指導が困難な地域もあるはずだ。その場合には、少数言語を使いこなせる人が、オンラインを通じて全国の子供たちに教えるような仕組み作りも大切になる。
 外国人の受け入れ拡大を国策として進めている以上、国は日本語教育自治体や学校任せにしてはならない。財政支援や先進地域の好事例の紹介に努めるべきだ。