静岡側が開山した7月10日、続々と富士山の山頂を目指す登山者たち=富士宮口6合目で
富士登山で遭難が相次いでいる。静岡県側では7月10日の開山から2日で3人が死亡するなど、7月28日までの死者は4人。既に昨年の開山期間の死者(2人)を上回っている。救助要請も相次いでおり、登山者が増えるお盆の時期を前に、関係者は安易な登山は慎むよう呼びかけている。(今坂直暉)
静岡県警によると、10~28日の遭難者数は24人で、内訳は死者4人、負傷者11人、無事救助9人。遭難した原因は転倒が12人と最多で、低体温症などの病気が7人、道迷いが4人、その他が1人だった。遭難者数は昨年同期の28人から減っているが、今年は開山が梅雨明け前となり、悪天候が死者の増加につながったとみられる。山梨県警によると、山梨県側でも開山した1日から29日までに2人が遭難死している。
富士登山を巡っては、一気に頂上を目指す「弾丸登山」や軽装での登山が問題になってきた。富士宮、須走、御殿場の3ルートを抱える県は今年から入山時間や山小屋の予約の有無を事前に登録する制度を導入。山小屋の予約がない場合は午後4時以降の入山自粛を求めている。吉田ルートがある山梨県は今年から登山口にゲートを設置し、1人2千円の通行料を徴収して1日4千人の上限を超えた時点でゲートを閉鎖している。
◆「山小屋も取らず野宿 命落としかねない」
これらの対策の効果はまだ判然としないが、静岡県側の山小屋関係者や県によると、弾丸登山は昨年より減っているとみられる。ただ、富士宮口8合目の山小屋「池田館」の池田裕之オーナー(51)は「昼間に上半身裸でリュックを背負ったり、サンダルで登ったりする軽装登山者はまだ多い」と話す。
21日には東南アジア系の登山客が100人超の団体で登山に訪れ、深夜に登山道や山小屋の周辺で野宿する様子が目撃された。同9合目の山小屋「万年雪山荘」の渡辺和将代表(44)によると、山小屋の前で数十人が寝袋や遭難時に暖を取るシートにくるまって地面やベンチで寝ていたといい、「山小屋の予約も取らず、野宿するつもりで登ってきた。命を落としかねない危険な登山だ」と警鐘を鳴らす。
県は富士登山の公式ウェブサイトで事前登録制の周知を日本語のほか英語や中国語など多言語で発信し、登山口では登山客に安全な登山を呼びかけている。県の担当者は「野宿は低体温症などリスクがあり、絶対にやめてほしい。軽装の登山も命に関わる」と注意を呼びかけている。