都道府県の境界が確定していない地域は…(2024年6月30日『毎日新聞』-「余録」)

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シーズン中、多くの登山客でにぎわう富士山=2023年8月11日、本社ヘリから幾島健太郎撮影
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山開き前のリハーサルで、ゲートを通過する山小屋宿泊の登山客を実演する関係者たち=山梨県の富士山5合目で2024年6月19日午後0時25分、前田梨里子撮影
 都道府県の境界が確定していない地域は、国土地理院の集計で全国に14ある。富士山の山頂部もそうだ。8合目より上は一部を除き、富士山本宮浅間(せんげん)大社が所有する。だが、県境については山頂と東斜面の一部が山梨県静岡県の間で未画定となっている
▲富士山の入山規制を巡り、対応が分かれる両県である。山梨県は7月1日の山開きとともに、県内にある登山道「吉田ルート」で1日4000人を上限とする入山規制を始める。登山客が多い人気ルートで、ピーク時は混雑が激しい。ゲートを設けて入山を管理し、1人2000円の通行料を徴収する
▲一方、静岡県は直接の規制は行わず、試行的に登山者のウェブでの事前登録や、マナーの啓発活動などを行う。同県側の登山道は三つあるうえに国有で、人数管理が難しい事情があるという
▲訪日観光客(インバウンド)が増え、危険な夜間の「弾丸登山」や、環境への悪影響などオーバーツーリズムが指摘される富士山だ。山開きを前にして、登山客とみられる複数の遺体が確認された。入山者への管理強化は必要だろう
▲県境問題が動かないのは山梨、静岡の対立激化を避けるためといわれる。入山を巡る対応からも、微妙な距離感がにじむ。新規制の導入後、静岡側には登山客が流入してくる不安もあるという
▲外国客らが混乱しないかも含め、効果の検証は欠かせまい。登山の安全と環境保全という目指す頂は共通している。地域の連携も深めつつ進化させたい、富士登山のルールだ。