◆海底には災害ごみ、漁をあきらめた船も
大きな地震被害が出た今年、同漁港の漁船8隻は海底にある災害ごみの清掃作業を優先し、トリガイの漁に出なかった。地元の漁師たちは体調を悪くしたり、兼業する民宿が復興関連業者の利用で忙しかったりと出漁せず、「今年は偶然、一人になった」という。
3代続く漁師の家庭に生まれ、トリガイ漁は30代の頃に始めた。「命懸け」と語る漁は、ワイヤで船とつなげた貝桁と呼ばれる道具を水深30メートルほどの海底に沈め、トリガイをかき集める。船を1時間ほど動かして貝桁を引き上げる作業を午前6時から4回ほど繰り返す。重い貝桁を引きずる船の操縦。そして貝桁を引き上げる作業に技術が必要で、作業は「船が傾くほど重い」と話す。
◆養殖も盛ん「能登とり貝」のブランド
年を取るにつれて、かつての漁師仲間は亡くなったり、介護施設に入ったり。命あっての漁に「一日一日がありがたいと、この年になって思うようになった」と語る。来年については「今も時々目まいがあるし分からん」。ただ海には小さい貝もあり、来年に向けて成育に不安はないといい、「達者でおったらやりたいな」と前を見据えた。