羽田事故の再発防止策 安全向上へ着実な実施を(2024年7月18日『毎日新聞』-「社説」)

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羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の会合=国土交通省で2024年6月24日、長屋美乃里撮影
 惨事を繰り返さぬよう、安全対策を着実に実行する必要がある。
 羽田空港で1月、日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故の再発防止策を国土交通省有識者委員会がまとめた。羽田や大阪、中部など主要8空港で順次、進めていくという。
 事故では、許可が出ていないにもかかわらず、海保機が滑走路に進入していた。管制官は気づいていなかったとされる。
 現在のシステムでは、着陸機を受け入れる滑走路に別の航空機が進入すると、モニター画面の色が変わる。有識者委員会は再発防止策で、管制官の見落としを防ぐため、警報音でも知らせるべきだと指摘した。
 一部の空港では、滑走路に進入できるかどうかをパイロットに知らせる表示灯が設置されている。事故現場にはなかったため、導入拡大が提案された。
 常に緊張を強いられる管制官の負担軽減策も盛り込まれた。
 滑走路担当は、パイロットとの交信やシステムの操作をしながら、周辺空域を監視する同僚らと情報交換する。管制官間の調整に当たる要員を置くことを求めた。
 人材確保も課題として挙げられた。全国の定員は2031人だが、6月時点で113人の欠員が生じている。
 滑走路への誤進入は以前から起きており、再発防止策には過去に提言されていた項目もある。対応を加速させるべきだ。
 5月にも福岡空港で、日航機が滑走路手前の停止線を越え、離陸に向け滑走中の別の航空機が緊急停止するトラブルがあった。
 滑走路上での事故の多くは、こうした人為ミスが原因である。完全になくすことは難しい。それを前提に、航空機の安全を守る仕組みを構築しなければならない。
 ひっきりなしに航空機が行き来する羽田空港は、世界的に見ても過密な状態にある。滑走路が井桁のように配置され、複雑な離着陸の運用がなされている。
 空港ごとに運航関係者が連携・協議する場を設け、安全性の向上を図っていくことも必要だ。
 訪日外国人の増加などで航空需要の拡大が予想される。事故につながるリスクをなくしていくための不断の取り組みが欠かせない。