なんで?無党派層「小池3割強、石丸2割弱、蓮舫1割強」…なぜ新聞によって世論調査結果が異なるのか、バイアスはかかっていないのか(2024年7月3日『みんかぶマガジン』)

 7月7日投開票の東京都知事選は、各種調査で有力視されている3候補の戦略に違いが見える。現職の小池百合子都知事は他の自治体がうらやむ子育て支援策をはじめとする実績を訴え、さらにバージョンアップしていくと強調する。


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 立憲民主党を離党し、共産党の全面支援を受ける前参院議員の蓮舫氏は「反自民・非小池」を前面に小池都政の批判票を狙う。
 前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は「清新なイメージ」戦略で無党派層や若者を中心に食い込もうとしている模様だ。
 最新の情勢調査をもとに、選挙分析に定評がある経済アナリストの佐藤健太氏が解説する。
小池氏を6割強が「評価する」、「評価しない」は3割弱
 まず、今回の都知事選は2期8年務めた現職の小池氏の都政運営を有権者がどのように評価するのかが最大のポイントになる。読売新聞は6月28~30日の調査をもとに1面記事で「小池氏が先行 蓮舫氏・石丸氏追う」と題した分析記事を報じている。それによれば、小池都政の評価は6割強が「評価する」としており、「評価しない」は3割弱にとどまる。
 この評価は他の各種調査でも同じ傾向にあり、共同通信が6月29、30日に実施した電話調査によると、小池都政を「大いに評価する」は12%、「ある程度評価する」は43%で、6割近い人が小池都政に“合格点”を与えていることがうかがえる。
小池独走の一方、石丸が蓮舫を猛追
 その点を踏まえて、政党やマスコミが実施している各種調査を見てみたい。筆者が入手した自民党の最新情勢調査によれば、6月20日の告示後最初の週末となった同22~23日の調査で、小池氏には42.4%が支持。蓮舫氏は30.3%、石丸氏は11.9%となっている。ラストサンデーを迎えた6月29~30日の調査では、小池氏が43.1%にリードを伸ばした一方で、蓮舫氏は28.0%に下落。石丸氏は13.8%に微増した。
 小池氏と蓮舫氏の差は1週間で12.1ポイントから15.1ポイントに拡大し、蓮舫氏と石丸氏の差は18.4ポイントから14.2ポイントに縮まっているという。自民党の調査ではいずれも「投票先未定」が1割弱という内容だ。
小池は女性支持層が厚く、蓮舫は60代以上、石丸は50代の支持を得る
 小池氏は男女ともに支持が最も多く、特に女性の支持は厚い。年代別で見ても、全年代で他候補を圧倒している。蓮舫氏と石丸氏に限ってみると、蓮舫氏は60代以上、石丸氏は50代の支持が高いとされている。
 小池氏の支持が伸びた背景としては、当初は公務を優先して街頭演説をする機会が少なかったものの、6月22日の八丈島訪問をはじめ奥多摩町青梅市北千住駅蒲田駅と街頭に立つ機会が増えたことが要因に浮かび上がる。18歳まで月5000円を支給する「018サポート」や私立高校の授業料実質無償化、給食費支援、介護職の給与アップといった実績を訴えており、自民党の調査からも幅広い世代に浸透していることがわかる。
小池「ややリード」蓮舫「激しく追い上げ」石丸「追う」
 JNNは6月29、30日の調査から中盤情勢を分析し、「小池氏ややリード」と報じた。蓮舫氏は「激しく追い上げ」、石丸氏については「追う」としている。小池氏は自民支持層の約6割と公明支持層の約8割を固め、蓮舫氏は立憲支持層の約7割、共産支持層の約9割の支持とした。
 日本テレビが7月1日に報じた中盤情勢分析によれば、小池氏がリードし、蓮舫氏と石丸氏が追う展開だ。小池氏は自民党支持層の7割から支持を得ており、公明党支持層の9割以上を固めている。無党派層も小池氏が最も多い3割強の支持を得ているという。
 読売新聞の調査では男女ともに小池氏の支持が厚く、蓮舫氏と石丸氏は女性の支持が少なめだったという。JNNの調査では無党派層は小池氏と石丸氏を支持する人がそれぞれ約3割、蓮舫氏は約2割となっている。女性の支持は小池氏が4割あまり、蓮舫氏は約3割、石丸氏は2割弱だったとしている。
立憲支持層の2割近くは小池支持、蓮舫無党派支持層は1割強
 では、自民党やマスコミ各社の調査で「2位」とされている蓮舫氏はどうか。日本テレビの記事によれば、蓮舫氏は告示直前に離党した立憲民主党支持層の6割を固め、共産党支持層からは7割弱の支持を集めている。ただ、無党派層は1割強の支持にとどまる。
 自民党の最新調査でも蓮舫氏は立憲支持層と共産支持層の約7割が支持しているが、立憲支持層の2割近くは小池氏を支持していることがわかる。無党派層でも3割強が支持する小池氏に対し、蓮舫氏は約2割にとどまっている。
無党派層の支持に限ると小池3割強、石丸2割弱、蓮舫1割強
 SNSを駆使した選挙戦を展開する石丸氏は、自民党の調査で40~50代の支持が多い。「日本維新の会」や「れいわ新選組」の支持層から一定の支持を得ている。また、日本テレビの記事でも自民党支持層の約1割、無党派層の2割弱の支持がある。有権者の5割近くを占めるとされる無党派層に限ると、「小池氏3割強、石丸氏2割弱、蓮舫氏1割強」というわけだ。
 共同通信の調査によれば、年代別では小池氏が30~60代の支持が最も多く、蓮舫氏は70代以上、石丸氏は20代以下が多かった。もちろん、各種調査では投票先を明らかにしない人がいるため、なお情勢は変わる可能性があることは触れておきたい。
固定電話と携帯電話の調査で結果に違いが見える
 政党やマスコミ各社の調査で気になることがある。それは、調査先が「固定電話」と「携帯電話」で結果に多少の違いが見えることだ。主要マスコミは最近、両方から有効回答を得ていることが多いのだが、「固定電話」への調査で支持が高い候補者が「携帯電話」の調査では若干低いということもみられている。
 固定と携帯の調査で回答した人のどちらがより多く投票に向かうかは分からないが、その動向次第では選挙結果を左右する可能性があるように映る。各種調査で気づいた点をもう1点加えると、対象エリアによっても数字の出方が異なっていると感じる。若者が多い街、高齢者が多く暮らす地域、都心部とそれ以外、などで違いが見える点は興味深いところだ。
岸田文雄内閣を「支持しない」と回答した人の約4割が小池氏を支持している
 一部メディアでは期日前投票の調査も実施している。それにおいてもエリアによって差が出ているようだ。一般的に期日前投票をする有権者は「必ず投票に行く」層が多く、それが7月7日の投票日当日まで持続するのか、それとも「先取り」だったのかは各陣営が気になるところだろう。いずれにしても、投票先未定の有権者がまだ少なくないので選挙結果がどうなるのかは分からない。
 小池都政を「評価する」と回答している人が約6割に上る中、蓮舫氏と石丸氏は「評価しない」層の残り3割を奪い合っている。蓮舫氏は野党議員時代から変わらぬ「超攻撃的スタイル」で小池批判を繰り返し、石丸氏は支援者のSNS拡散を背景に「イメージ戦略」で浸透を狙っている。
 ただ、読売新聞の調査によれば、内閣支持率が低空飛行を続ける岸田文雄内閣を支持しないと回答した人の約4割が小池氏を支持しているという。終盤にかけては、「小池都政を評価する」層を取り込めるか否かに加え、岸田政権の批判票の受け皿になれるかどうかもポイントになりそうだ。

佐藤健太