【2位も難しいんですか…】都知事選終盤に蓮舫候補がまさかの大失速を起こした「もっともな理由」(2024年7月3日『FRIDAY』)

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阿佐ヶ谷駅前で演説を行う蓮舫
もはや1位に近い2位ではなく、3位に近い2位か、3位転落もありえそうだ。
7月7日投開票の東京都知事選で現職の小池百合子知事(71)の“対抗馬”と目されていた元参議院議員蓮舫氏(56)の支持が失速している。
6月20日の公示日直後に政界関係者の間で出回った“自民党調査”なるデータでは、小池氏が10ポイントのリード。日本経新聞社の選挙戦序盤の情勢調査でも「小池36 蓮舫26」と両者の差は10ポイントあった。
都知事選は1947年から2020年まで現職が12戦無敗。現職の都知事で敗れた候補はこれまでにいない。小池氏は4年前の選挙で366万票を集め、歴代2位となる得票記録を持っている。自民党公明党、国民民主党都民ファーストの会が小池氏を事実上支持しており、今回も「250万票は固い」と目されている。
しかし、東京都は無党派層が圧倒的に多く、“風が吹けば当落を左右しかねない”のが特徴だ。「選挙前までは蓮舫氏には風が吹きかけていた」と蓮舫陣営の幹部は現状を嘆く。
「日を追うごとに石丸伸二氏(41)に追い上げられており、小池氏に勝つどころか、『2位を死守』と目標が下方修正されている。情勢調査は各社で割れているが、日テレの調査とされる『小池43 蓮舫19 石丸16』という数字が実態に近いと感じる。6月30日(日)までの期日前投票のデータとしてNHKが算出したとされる数字では『小池45 石丸25 蓮舫20』と石丸氏に抜かれていた。すでに陣営では、責任を都連会長と幹事長に押し付けようという動きが出始めている」
蓮舫氏の蹉跌は何だったか。少子化対策や若者支援、非正規の格差訴えを掲げた「7つの約束」とした公約にミスがあった、と立憲民主党都議会議員は分析している。
「鈴木烈都議と五十嵐えり都議という、立憲の中でも左派の二人が中心となって草案を作り、党政調の職員、国会議員秘書が肉付けを行った。時々、蓮舫さんがやってきて『ペット殺処分ははずそう』『行財政改革は強調』など意見を伝え、7つの約束ができあがった。ただ、数値目標はなく、多子世帯を住民税非課税世帯のように扱うなど、立憲のステレオタイプな公約ばかりが並んでいた。都の現状や問題がわかっておらず、都の幹部が作った小池氏の公約と差がでた」
蓮舫氏は29日に追加の公約を発表。神宮外苑の再開発について賛否を問う「都民投票」の実施を提案した。だが、急場しのぎの感は否めず、公約を伝達する方法にもミスがあった。自民党職員が失笑する。
蓮舫氏は人が多い中央線沿線を中心に演説している。しかし、話の内容は若者支援や非正規の格差解消。聴衆に響かせたいのなら、23区内でも平均所得の高くはない地域で演説すべきだった。立憲、共産党社民党の3党で取れると目されるのは140万票程度。浮動票を上乗せしないと小池氏には勝てない。ところが、浮動票は人気急上昇中の石丸候補がさらっている。反小池票も石丸候補にもっていかれるという体たらくだ」
小池氏は6月22日に八丈島で告示後初となる街頭演説を行い、翌23日はJR奥多摩駅で演説を行った。29日には足立区の北千住で23区での初の街宣を行い、翌30日は大田区の蒲田で行った。
蓮舫氏と対照的なこの演説戦略は「川上作戦」といわれている。住民の少ない郡部から始め、終盤にかけて“川下”の都市部へと向かい、支援の輪を広げる戦術で、故田中角栄氏が得意としたものだ。
「ただ、小池氏にも危うさはある。粛々と選挙戦をこなせばいいのに、八丈島奥多摩でフリージャーナリストにカイロ大学歴詐称疑惑などを追及されてイラつきをかくせなかった。八丈島空港では思わず『つばさの党の人?』と切り返していた。あまり話題にならなかったが、この手の舌禍事件は避けたい」(都民ファーストの会幹部)
現状で3位につけていると見られる石丸氏は7月1日、雨の平日夕方にもかかわらず阿佐ヶ谷駅周辺をたくさんの聴衆で埋めた。ただ、彼の演説はゆっくり丁寧だが、スローガンばかりで具体策は乏しい。話術でいえば、小池氏や蓮舫氏のほうが巧みだ。
「演説は下手だけど、そこが永田町に染まっていないようで新鮮に映るのではないか。私も20代から150近くの選挙に携わってきたが、ボランティアが5000人も集まった候補を見たことがない。お金をかけずにポスターを公営掲示板に貼れたうえ、献金は2億円も集まった。予想外のことが次々と起きている」
永田町で「選挙の神様」「当選師」との異名を誇る石丸陣営の選挙プランナー、藤川晋之介氏(70)は困惑しつつも、こう断言した
「150万票は見えてきた。2位は蓮舫さんではなく石丸でしょう」
七夕に小池氏を追い詰めて、意気揚々と次期衆議院議員に出馬する――蓮舫陣営が描いていたとされるシナリオは、修正を余儀なくされそうだ。
取材・文・写真:岩崎大輔
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