服役経験がある作家の故・安部譲二さんは各種ギャンブルに通じ…(2024年6月30日『東京新聞』-「筆洗」)

 服役経験がある作家の故・安部譲二さんは各種ギャンブルに通じた。やくざであることを隠し航空会社で国際線の客室乗務員をしていたころ、同僚と機体を使った賭け事に興じた
▼離陸前に前輪タイヤにチョークで1本線を引き、着陸後に停止した時、時計の文字盤で何時を指しているかを賭けたという。操縦席からも前輪は見えず、イカサマはできない
▼賭け金は1~2ドルだったが、勝てばステーキを堪能できたと著書『博奕・ギャンブル・旅烏』で明かす。賭け事が好きな人は手法をいろいろ考えるものだ
キャプチャ
▼スポーツ、選挙などあらゆる事象を賭けの対象にする英国で7月4日に投開票される総選挙。スナク首相が率いる与党保守党の複数の候補者らが総選挙の日程を内々に知りながら、日程を当てる賭けをした疑いが報じられた
▼選挙は秋ごろとみられていたが、スナク氏は5月22日に「7月4日に実施」と表明。氏に近い候補は表明数日前に「7月実施」に2万円相当を賭け、当てたという。内情を知っていれば刑事罰の対象。苦戦が伝わる保守党にさらなる打撃となる醜聞で14年ぶりに労働党が政権に返り咲く可能性が高いらしい
▼安部さんは、国民から税をとり、その人生を左右する政府を、鉄火場を開き手数料を取る胴元に例え、彼らに好き勝手させないために選挙に行くべきだと唱えていた。英国は胴元交代だろうか。