自衛隊が1日、発足から70年を迎えた。
日本を日本を取り巻く安全保障環境は非常に厳しい。陸海空と内部部局の全ての自衛隊員は国民の期待に応え、日本と世界の平和を守る崇高な任務に邁進(まいしん)してほしい。
現憲法には国防に関する直接の規定が存在しない。9条を旗印に自衛隊を違憲と決めつけて排撃したり、自衛隊の活動や充実を妨げようとしたりする「平和運動」が横行する時代が長く続いた。抑止力向上を妨げる似非(えせ)平和運動だったといえる。
逆風にさらされながらも自衛隊と隊員は黙々と訓練や防衛力整備に当たってきた。防衛出動が発令されたことはないが、厳しい任務や訓練で、前身の警察予備隊(昭和25年8月発足)からを含め、2千人以上の隊員が殉職している。その御霊(みたま)に哀悼の誠を捧(ささ)げたい。逆風の時代を含め過去に隊員として国防を担った人々にも感謝したい。
ウクライナの戦場ではドローン(無人機)の活用が急速に進んでいる。サイバー、宇宙、電磁波など新領域での備えの必要性も叫ばれている。軍事は文字通り日進月歩の世界だ。自衛隊は有事に後れをとらないよう万全を尽くす義務がある。
戦う態勢を整えた方が、抑止力を高め平和を保てる、もし有事になっても侵略者を撃退できる―という安全保障の逆説を忘れてはならない。
自衛隊発足70年 幅広い任務こなし信頼深めよ(2024年6月30日『読売新聞』-「社説」)
安全保障環境は極めて悪化している。自衛隊の果たすべき役割は増してきた。厳しい訓練を重ねて、日本の平和を守り、国際社会の安定に貢献してもらいたい。
自衛隊が発足してからあすで70年となる。1946年の憲法制定当時、吉田内閣は再軍備を否定したが、50年に朝鮮戦争が勃発すると、米国の要請もあり、警察予備隊を設置した。52年の保安隊を経て54年に自衛隊が創設された。
多くの派遣先で、自衛隊は規律正しい仕事ぶりを評価された。現地のニーズに沿った献身的な活動は、国際社会での日本の存在感を大きく高めたのではないか。
自衛隊は、国の安全や社会の安定に欠かせない存在として広く認識されていると言えるだろう。
ただ、今後はより幅広い任務をこなさねばならない。
今、脅威は、陸海空といった従来の領域にとどまらず、サイバー空間や宇宙にも広がっている。
政府は23年度から5年間の防衛費の総額を従来の1・6倍に増やすことを決めた。財源をどう確保していくかは重要な課題だ。サイバー防衛の体制を強化するため、通信の秘密に関する憲法解釈の整理にも取り組まねばならない。
一方、近年では、ヘリコプターの墜落事故や自衛官による機密情報の 漏洩ろうえい 、セクハラなども相次いでおり、緩みが目立つ。
油断すれば、築き上げてきた信用はあっという間に失われることを自衛隊は肝に銘じるべきだ。