裏金議員公認に関する社説・コラム(2024年10月6日)

新宿末広亭の楽屋で将棋が流行したことがあったそうだ。かつて…(2024年10月6日『東京新聞』-「筆洗」)
 
 新宿末広亭の楽屋で将棋が流行したことがあったそうだ。かつての席亭、北村銀太郎さんが語っている。昭和20、30年代の話だろう
▼昭和の名人で将棋好きの古今亭志ん生が流行の中心だったが、やがて困ったことになる。噺家(はなしか)たちは将棋に夢中になってしまい、高座に上がったかと思えば、すぐに下りてきて、また将棋。噺に身が入らぬ。北村さんはついに楽屋での将棋を禁止したそうだ
自民党衆院選の公認候補を巡る「ぞろっぺいさ(いい加減なこと。疎略なこと)」にこの話を思い出した。あれほど世間を騒がせ、自民党不信の原因となった「裏金議員」にも原則、党の公認の看板を与えるそうだ
▼「裏金議員」を公認せず、政治とカネの問題で、立て引きの強いところを見せるべきだろうに石破さん、結局、これができなかった
▼公認候補を差し替えていては迫る27日の総選挙に間に合わないというのが言い分で、このあたり、将棋の時間ほしさに客そっちのけになった落語家さんにつながるか。自民党が大切なのはいったいどっちだろう。政治とカネの問題へのけじめか、それとも「裏金議員」か
▼非公認とすれば「裏金議員」を抱える党内勢力の反発を買い、石破さんの立場が難しくなるという事情もあろうが、有権者という「お客さん」は政治とカネの問題にとりわけ厳しい。次の総選挙で、しまりのない自民党の「芸」に拍手を送るとは思えない。