すぐ近くにある別世界…東京の「楽園」11島のグルメも絶景も 伊豆・小笠原諸島が「地球の歩き方」に(2024年6月28日『東京新聞』)

 
 旅行ガイドの定番「地球の歩き方」シリーズに、伊豆・小笠原諸島の11の有人島に特化した「東京の島々」が加わった。観光名所はもちろん、グルメやアクセス、ワーケーション事情などあらゆる方面から取り上げ、長期滞在にもぴったりな1冊に仕上がった。
「地球の歩き方 東京の島々」を手にする編集者の斉藤麻理さん=品川区で

地球の歩き方 東京の島々」を手にする編集者の斉藤麻理さん=品川区で

◆東京ガイド3部作の最終章

 表紙に「東京なのに別世界!」の文字が躍る。巻頭には、旭山展望台(父島)や地層大切断面(伊豆大島)などの「東京の島美景11」、各島のWi―Fi事情やウェブ会議ができる個室を調べた「アイランドワーケーションのすすめ」や、「指名買いしたい島の推し調味料BEST16」などの特集。続いて、各島の歴史や名所を解説している。2020年以降、「多摩地域」「東京23区」と細分化して出版してきた東京ガイド3部作の最終章だ。
(左)父島の旭山展望台
(右)伊豆大島の地層大切断面=いずれも©地球の歩き方/Gakken

(左)父島の旭山展望台 (右)伊豆大島の地層大切断面=いずれも©地球の歩き方/Gakken

 都によると、昨年1年間の伊豆・小笠原の観光客数は約41万5000人。今年1億人と見込まれるパリなど、有名観光地とは比べものにならないほど小さいが、プロデューサーの斉藤麻里さん(38)は「東京の残りの島しょ部編を出さないわけにはいかない」と奔走。社内で交渉を重ね、ゴーサインにこぎ着けた。

◆船、ヘリ…アクセス事情手厚く

 昨年3月から取材に着手し、スタッフ5人が各島に降り立った。天候に左右されて船が出なかったり、ヘリコプターの予約が取れず上陸までに2カ月かかったりと取材は難航。だが、苦労した分、アクセス事情は手厚く本に盛り込んだ。編集部(品川区)は「東京の島を身近に感じ、気軽に旅をして」と思いを込める。
(左)毎晩多くの人が訪れる青ケ島の居酒屋「一人」©地球の歩き方/Gakken
(右)居酒屋「一人」のおすすめメニュー「岩のりの卵焼き」=菊池弘美さん提供

(左)毎晩多くの人が訪れる青ケ島の居酒屋「一人」©地球の歩き方/Gakken (右)居酒屋「一人」のおすすめメニュー「岩のりの卵焼き」=菊池弘美さん提供

 詳細な情報に、現地の住民から歓迎の声があがる。斉藤さんらが「行くのに一番苦労した」という青ケ島で、唯一の居酒屋「一人(とり)」を手伝う菊池弘美さん(59)は「店がガイドブックに紹介されるのは初めて」と喜ぶ。「島の人と一体になってワイワイするのはきっと都会では味わえない。一期一会の夜を楽しみに来て」と歓迎。なかなか採れない「岩のり」を使った卵焼きでもてなすという。
 竹芝桟橋(港区)から高速船で3時間ほどの式根島観光協会田村修一事務局長も「宣伝力が少ないからありがたい。東京のすぐ近くに楽園があることを知ってほしい」と願う。

◆高齢化や人口減に直面「魅力知る入り口に」

 コロナ禍でダメージを受けた観光客数は回復傾向にある一方、各島は高齢化や人口減少に直面している。都は移住の相談窓口を東京交通会館千代田区)に設置するほか、昨年度から実際に島暮らしを体験するツアーを開催。ガイドではこうした情報も載せた。都の河野幸介・多摩島しょ移住定住促進担当課長は「島の魅力を知ってもらえる入り口になる」と期待する。
 編集部によると、島好きは、旅を重ねた結果、島に移住するケースも多いという。将来の選択肢を広げるため、この夏休み、手始めに「都内の楽園」を旅してみてはいかがでしょうか。
 Gakken刊、別冊を含む464ページ、2640円。
文・山下葉月/写真・川上智
 
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