後発薬の不足 安定供給へ業界再編を(2024年6月28日『東京新聞』ー「社説」)

 後発薬(ジェネリック医薬品)の不足が続いている。2020年以降、複数の製薬会社で不正が発覚し、業務停止に追い込まれたためだ。後発薬の製薬会社の多くは小規模のため、安定的に供給するためには業界を再編し、供給力の向上を図ることが必要だ。
 後発薬は先発薬より安価で、厚生労働省が医療費削減のために普及を進めてきた。供給される医薬品の約8割が後発薬で、医療を支える重要な基盤となっている。
 しかし、不正発覚に伴う業務停止で後発薬不足が深刻化。日本製薬団体連合会の調査では、24年5月時点で出荷停止や限定出荷の医薬品3906品目の約7割が後発薬だ。業界は増産に努めるが、不足は今も解消していない。
 後発薬不足の原因は、業界の産業構造にもある。
 後発薬の製薬会社は小規模企業が多い上に、多品種少量生産を求められる。後発薬の製薬会社190社のうち、主に後発薬を供給する会社は105社あるが、その約8割の86社が中小企業だ。
 人材も生産能力も限られ、需要の拡大に生産や品質管理が追いつかないのが実情。さらに後発薬は政府が定める公定価格で薬価が引き下げられ、採算割れする製品もあり、経営を圧迫している。
 厚労省有識者検討会がまとめた報告書は、後発薬の製薬業界の産業構造上の課題を指摘。5年間を集中改革期間とし、業界に対して経営統合や、事業の一部譲渡などによる企業規模の拡大、効率化を求めている。
 業界は指摘を重く受け止めてほしい。製薬会社側も、企業再編により過度な低価格競争から抜け出し、安定した経営環境が整うことを望んでいるのではないか。
 一方、厚労省は後発薬普及の旗を振ってきたものの、安定供給確保策や産業育成が不十分だったことは報告書が指摘する通りだ。
 同省は製薬企業に対し、製造状況の自主点検や、供給不足の恐れがある場合の報告を求めている。産業育成を怠った責任を自覚し、後発薬増産に向けてあらゆる手だてを講じてほしい。
 製造過程での品質管理や流通状況の監視体制を強化することも不可欠で、必要な法令の整備や金融面での支援も急がねばならない。後発薬が国民に信頼され、医療を支え続けるためにも、安定的に供給できる産業に育てたい。