こども家庭庁がウェブサイトの特設ページで紹介しているヤングケアラーの事例
子どもたちが家族の介護や世話に追われて夢を諦めたり、自分のことを後回しにしたりすることのないよう、社会で支えたい。
子ども・若者育成支援推進法が改正され、ヤングケアラーが行政の支援対象に位置付けられた。施策を進める計画の策定や、情報提供と助言に当たる拠点の整備が、自治体の努力義務となる。
国の調査では、中学2年の17人に1人、高校2年の24人に1人がヤングケアラーとされる。小学6年の15人に1人が家族の世話をしていた。親の介護のほか、弟妹の保育園の送迎や料理・洗濯などを担っている場合もある。
かつては「お手伝いをする良い子」とみなされ、社会課題とは認識されていなかった。関心が高まったのは、当事者らが声を上げ始めた約10年前からだ。
行政の対応は、ここ数年で進んだ。埼玉県で2020年に全国初の支援条例が制定され、国も22年度以降、啓発や自治体への財政支援を強化してきた。
ただ、取り組みには地域差がある。子どもや学校に実態調査をした自治体は23%しかない。相談窓口の整備も8%にとどまる。
法制化により、地域格差の是正が期待される。大学生や社会人になっても介護などは続くため、18歳以上のケアラーの実態把握と切れ目ない支援も急がれる。
懸念されるのが、対象が限定されかねない点だ。法律には「介護や世話を過度にしている子や若者」と記されているが、どこからが過度かという線引きは難しい。
独自の現金給付の制度を設けたものの、申請がほとんどなかった自治体もある。多忙でも家族を支えることに誇りを持つ子もいる。
00年に介護保険制度が始まり「ケアの社会化」が進んだが、介護や世話をする家族の負担がなくなったわけではない。子育てと介護が重なる「ダブルケア」の問題も近年注目されている。
年代を問わず、ケアラーの孤立を防ぐ仕組みを考えなければならない。