◆濃度が倍増すると異常の割合が2.25倍
PFASと染色体異常の関連性の研究はほとんどなく、新たな健康リスクの可能性として浮上した。エコチル調査のデータを使った研究で、PFASの健康影響の可能性が指摘されるのは初めて。
エコチル調査に参加する信州大の野見山哲生教授らの研究グループが、全国の妊婦約2万5000人の血中濃度と、生まれた子どもの染色体異常の関連性を分析した。それによると、PFASの一種PFOS(ピーフォス)の血中濃度が母体で倍増するごとに、子どもの染色体異常の割合が2.08倍になると推定できるとした。PFNA(ピーエフエヌエー)では1.81倍、7種類のPFAS合計では2.25倍になるとした。染色体異常は流産を引き起こすほか、出生児の先天異常として21トリソミー(ダウン症候群)の原因になることなどを挙げた。
◆「新たな枠組みの研究が必要」
一方で、染色体異常を確認したのが44症例と少なく、流産が発生しやすい妊娠12週より前の妊婦のデータが得られていない点などから「研究結果を慎重に解釈するべきだ」とした上で、「結果を確認するために今後の研究が必要だ」とも言及している。
◆環境相「様々な研究の一つ」
今回の研究結果について、伊藤信太郎前環境相は9月20日の閣議後会見で、「さまざまな研究の一つと認識している」と言及。追加調査の必要性については、染色体異常との関連性が見られなかったという研究もあるとして、「今回の研究のみに基づいて、妊婦のPFASの血中濃度の検査を行うべきだと結論づけることはできない」と答えた。
国内外の研究では、PFASは腎臓がんリスクや血中コレステロール値の上昇、免疫力の低下、胎児・乳児の成長阻害などの関連が指摘されている。昨年12月には世界保健機関(WHO)の専門組織がPFASの一種PFOA(ピーフォア)について「発がん性がある」と認定した。(松島京太)