「警察の中の警察」 重大不祥事で行われる警察庁の特別監察 平成23年以降で4回(2024年6月24日『産経新聞』)

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特別監察のため、鹿児島県警本部に入る警察庁の監察官ら
鹿児島県警に対する警察庁の特別監察が24日、始まった。監察は、警察内部の不祥事案を調査し、必要に応じて事件化したり処分したりするため「警察の中の警察」とも呼ばれる。一方、警察庁の特別監察は、県警の行う監察を指導、監督することに主眼が置かれるという違いがある。
警察庁都道府県警への監察は年に1回程度、定例的に行われる「計画監察」と「随時(特別)監察」がある。特別監察は平成11年、神奈川県警で、現職警察官の覚醒剤使用を組織的に隠蔽(いんぺい)したとして元本部長ら県警幹部が在宅起訴されるなど、重大な不祥事が相次いで発覚した場合などに行われてきた。
警察庁によると、文書が残っている特別監察は平成23年以降、今回を入れて計4回。愛知県警警察学校でのセクハラ事案や、大阪府警堺署での虚偽公文書作成などの事案で行われたという。
今回、警察庁は、鹿児島県警内で、不同意わいせつ、盗撮、情報漏洩(ろうえい)による地方公務員法違反、国家公務員法違反と職員や元生活安全部長の逮捕が相次いだことを重視。片倉秀樹首席監察官を筆頭に3人が24日午後2時ごろ、県警本部に入った。片倉首席監察官は警察庁総務課長や皇宮警察副本部長、警視庁公安部長などの要職を歴任してきた。野川明輝県警本部長ら幹部や職員から聞き取りを行い、原因究明に向け一連の経緯を確認する。
警察庁は鹿児島県警への特別監察について「一連の事案の事実確認を進めるとともに、県警が抜本的な再発防止策を策定するに当たって、指導やサポートを行っていく」としている。(橋本昌宗)

鹿児島県警の情報漏洩事件「関係性築けず異常な状態」京都産業大教授・田村正博氏(警察行政法)(2024年6月24日『産経新聞
 
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警察大学校長で京都産業大の田村正博教授=今年3月、東京都千代田区(鴨川一也撮影)
今後の裁判で鹿児島県警の前生活安全部長、本田尚志被告が情報漏洩に至った詳しい動機が明らかになるだろうが、一般人の個人情報を第三者に提供することは正当化されない。ましてや個人の犯罪被害の経歴は個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたる。「公益通報」を盾に誰よりも守るべき被害者の権利を侵害することは認められるべきではなく、正当とはいえない。
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【表で見る】鹿児島県警の情報漏洩事件を巡っては主張が対立している
一方で組織の最高責任者である野川明輝本部長自身の責任も重い。本田被告が本部長への不満を違法行為によって主張するというのは異常な状態だ。県警幹部と適正な関係を築けていなかったのではないか。警察官による盗撮疑い事件は、継続的にフォローすべきだった。
別の事件で報道関係者の自宅を家宅捜索したことは、犯罪を構成する証拠の収集の一環だが、他者へ不当な権利侵害が及ばないよう配慮されるべきで、捜査上の必要性を超えて過剰な情報収集が行われないよう、議論を深めていくことは必要ではないか。(聞き手 藤木祥平)