鹿児島県警の内部資料を漏えいした疑いで逮捕された、前の生活安全部長が第三者に郵送した文書には、県警本部長に関する記載はなく、前の刑事部長が盗撮事件を静観するよう指示した旨の記載があったことがわかりました。
警察の内部情報を第三者に漏らした疑いで逮捕された鹿児島県警の前の生活安全部長、本田尚志容疑者(60)は、警察官による盗撮事件やストーカー事案について、県警トップの野川明輝本部長が隠ぺいを図ったと告発しています。
関係者によりますと、本田容疑者が北海道・札幌市の記者に郵送した文書には、前の刑事部長が盗撮事件を静観するよう指示したという趣旨の記載があったことが新たにわかりました。
この盗撮事件は本部長指揮の事件で、刑事部長には指揮の権限はありませんでした。
また、文書には野川本部長に対する記載はなかったということで、警察が調べを進めています。
納得できる説明を 問われる本部長の姿勢 県警巡る不祥事隠蔽疑惑(2024年6月8日『南海日日新聞』)
不祥事隠蔽を否定するコメントを発表した県警の野川明輝本部長(右)=7日午後6時すぎ、鹿児島市の県警本部
警察関係者が相次いで逮捕されるなど、不祥事続きの鹿児島県警を巡る問題は、「本部長による不祥事隠蔽(いんぺい)疑惑」の浮上にまで発展した。警察情報を外部に漏らしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕、送検された県警本部前生活安全部長(60)の〝告発〟を受けて野川明輝本部長は7日、鹿児島市の県警本部で前日に続きコメントを発表。「隠蔽を意図して指示を行ったことは一切ない」と否定した。ただ、報道陣の取材に応じたのは2日間で計約5分のみ。県民が納得できる十分な説明だったとは言いがたい。
「隠蔽は本当ですか?」「本部長、一言お願いします」―。6日、鹿児島市の県議会庁舎。県議会本会議に出席していた野川本部長が議場を出ると、報道陣が一斉に駆け寄った。野川本部長は記者の問い掛けに答えず、終始無言のまま急ぎ足で議会庁舎を後にした。
事の発端は5日に鹿児島簡裁で開かれた勾留理由開示手続きでの前部長の意見陳述。「本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」とし、不祥事をまとめた文書を記者に送ったことを打ち明けた。前部長は「マスコミが記事にすることで、不祥事を明らかにできると思った。決して自分の利益のために行ったことではない」などと訴え、警察組織としての在り方にも疑問を投げ掛けた。
前部長による主張の真偽は不明だ。だが、こうした疑惑が浮上した以上、野川本部長は組織のトップとして説明責任を果たす必要がある。
6日、報道陣の取材に応じない野川本部長に対し、新聞と通信、テレビ各社が加盟する県警記者クラブは、会見を開いてコメントを発表するよう申し入れを行った。これに応じる形で同日夕、野川本部長がカメラの前に立った。
野川本部長は「前生活安全部長が、県警の他の部長を問い合わせ先と記載した上で、公表を望んでいないストーカー規制法違反事件の被害女性の個人名などを第三者に漏らした。警察職員の模範となるべき立場にあった者が逮捕されたことを大変重く受け止めている」とコメント。逮捕された前部長から「本部長が不祥事を隠蔽しようとした」と名指しされたことについては「承知している」とし「(前部長が意見陳述で隠蔽されたと主張した)二つの事案については、県警において被疑者を逮捕するなど、いずれも必要な対応が取られている。被疑者(前部長)の主張については、事件捜査の中で必要な確認を行っていく」と述べた。
野川本部長が取材に応じたのはコメントを読み上げた時間を含め約3分。7日は「自身の隠蔽を否定しなかったなどと報道で取り上げられた」(野川本部長)のを理由に、新たなコメントを発表。質疑は限られ約2分で終了した。疑念は払拭(ふっしょく)されていない。
4月以降、前部長の事件とは別に情報漏えいや不同意わいせつ、盗撮の疑いで現職警察官3人が逮捕されるなど異常事態が続く県警。警察庁の露木康浩長官は6日の定例記者会見で相次ぐ不祥事に言及し、鹿児島県警に対して監察を実施する方針を示した。
5日にあった県議会一般質問で議員の質問に答えた野川本部長は「県民のための警察という気持ちで初心に返り、職員一丸となって取り組んでいく」と語っている。不祥事の再発防止対策や組織改革も急務だが、県民がまず知りたいのは真実だろう。
鹿児島県警の情報漏えい事件 記者に郵送した内部文書の内容が発覚 3つの不祥事が記載され「闇を暴いてください」 さらに「前の刑事部長が『静観しろ』と指揮」(2024年6月8日『TBS NEWS』)
鹿児島県警の前の生活安全部長が情報漏えいの疑いで逮捕された事件で、記者に郵送したとされる文書の詳細が私たちの取材で分かりました。そこには、警察官の不祥事について、“前の刑事部長が隠ぺいを指示した”と書かれていました。
の代表・中願寺純則さん(64)。“鹿児島県警の内部情報を、ハンターに記事を書く記者から共有された”と話します。
調査報道サイト「ハンター」 中願寺純則 代表
「公益通報、内部通報だったと確信しています。
(Q.送り主が前生安部長とは知らなかった)
全然まったく。正直驚きました」
送り主は、鹿児島県警に情報漏えいの疑いで逮捕された前の生活安全部長の本田尚志容疑者(60)とみられます。
文書は10枚あり、4月上旬、差出人不明で届きました。その1枚目を見せてもらうと…
調査報道サイト「ハンター」 中願寺純則 代表
「元生安部長から送られたものがここにあります。
(Q.これが送られてきた文書そのもの)
そのものです。
(Q.ほかの文書を読むと中身が書いてある)
書いてあります。
ほかの紙には「鹿児島県警の闇」と題し、1.警察官によるストーカー、2.盗撮事案の隠ぺい、さらに、3.警察幹部による勤務手当ての不正請求などが書かれていたということです。
盗撮事案については、先月、巡査部長の男が逮捕され、その後起訴されています。
そして、問い合わせ先として記載されていたのが、前の刑事部長の名前と連絡先です。
本田容疑者は3日前の勾留理由の開示手続きで「野川明輝本部長が不祥事を隠ぺいしようとしたため、記者に情報を送った」などと主張していますが、文書に本部長の記載はなく、“前の刑事部長が盗撮事案を「静観しろ」と指揮した”、と書かれていたということです。
本田容疑者が送ったとみられる文書より
「(前の)刑事部長の指揮は『静観しろ』だった。県警の非違事案が連続発生し、ここで、警察職員逮捕となれば、組織へのダメージが大きいと判断し、(前の)刑事部長は不作為を指示した。県民の安全より自己保身を決断した」
文書にある“前の刑事部長の問い合わせ先”に電話をかけてみますが…繋がりませんでした。
さらに自宅も…応答はありませんでした。
そもそも「ハンター」では去年から、“強制性交の疑惑をめぐり鹿児島県警の捜査に問題があった”などと報じていて、今回とは別の警察資料をサイトに掲載。
鹿児島県警はこの資料の掲載を受けて捜査を開始し、当時巡査長の男を情報漏えいの疑いで4月に逮捕。「ハンター側も4月に家宅捜索を受けた」と中願寺さんは話します。
調査報道サイト「ハンター」 中願寺純則 代表
「うちに家宅捜索に来た時に問題になっている本田前部長のブツの画像が全部あった。それを家宅捜索の時、(県警が)見つけたということです。
(Q.どういった意図があると)
報道圧力以外、なにものでもない。腐敗の体質が進んでいるとみています。厳しく追及しなきゃいけない」
きのう、野川本部長は「隠ぺいを指示した意図は一切ない」と述べています。
警察庁は不祥事を調べる監察を鹿児島県警に行う方針です。
2024年6月7日
2024年6月7日
2024年6月6日