蓮舫氏の「選挙違反疑惑」を報じないメディアに思惑はないか(2024年6月19日『デイリー新潮』)

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蓮舫立憲民主党代表代行
 東京都知事選に関して注目度が高いのは現職の小池百合子都知事蓮舫立憲民主党代表代行である。蓮舫氏の街頭演説を実際に聞いたジャーナリストの三枝玄太郎氏は、どうしてもメディアの報じ方にひっかかる点があるという。
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つばさの党と蓮舫
 この1カ月ほどの間に2回、立憲民主党蓮舫氏と選挙に関する記事を書くこととなった。1回目は5月、「つばさの党」の選挙妨害に関する件だ。4月の衆院東京15区補欠選挙における同党の振る舞いが異常だったことは繰り返すまでもないだろう。他陣営の演説へのいやがらせ、突撃は目に余るものだった。のちに妨害行為に関わった同党のメンバーは公職選挙法違反で逮捕されている。
 ただこの時の記事〈はたして蓮舫氏に「選挙妨害」を批判する資格はあるのだろうか 東京15区「場外乱闘問題」の背景〉で、つばさの党の悪質さとは別に私が指摘したのは、蓮舫氏のダブルスタンダードだ。以下のように書いた。
「(つばさの党の妨害行為について)蓮舫氏は『警察の対応が遅くて怖かったです』と書き込んだ。
 私は苦笑を禁じえなかった。なぜなら警察が対応しづらい状況を作ってしまったのは、ほかならぬ左派勢力の人たちだからである。私には蓮舫氏の書き込みは、いつものブーメランの類に思えてならなかった。
 2019年、札幌市で街頭演説をしていた安倍晋三首相(当時)は男女にヤジを飛ばされた。一人の男性は『アベヤメロ!』もう一人の女性は『増税反対!』と叫んだ。男性は北海道警の警察官に現場から排除された。(略)
 これに対して、男女は『表現の自由を侵害された』として、北海道に計660万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。札幌地裁の広瀬孝裁判長は訴えを認め、道に計88万円の賠償命令を出したのである。しかもその約3カ月後の2022年7月8日、安倍晋三元首相は奈良市で演説中に凶弾に斃れた。
 安倍元首相の暗殺事件後に開かれた札幌高裁(大竹優子裁判長)の判決公判でも、大竹裁判長は、男性の訴えこそ退けたが、女性の訴えは認め、一審の女性に対する55万円の賠償命令は維持した。
 問題は、いずれの判決も『ヤジは表現の自由』とする原告側の主張の根幹部分を認め、道警の排除は『表現の自由の侵害に当たる』と判断したことである。これで萎縮しない警察があるだろうか。
 この一件で北海道のメディアは、こぞって道警の対応を批判し、地元HCB(北海道放送)のデスク職の男性は自らメガホンをとって、『ヤジと民主主義』というドキュメンタリー映画まで作った。この訴訟の原告の女子大生は、その後、労組の専従職員となり、書記次長となっている。この労組の上部団体は自治労であり、立憲民主党の支持母体である。
 そして、今回の補選で警察の迅速な対応を求めていた蓮舫参院議員は2019年7月、前述の裁判闘争となった安倍首相(当時)へのヤジについて『この(北海道警の)排除の在り方はおかしい』とXに投稿している」
 安倍首相へのヤジというのは、決して穏当なものではなかった。今もネット上で動画を見ることができるが、個人的には選挙妨害と言われても仕方がないレベルのものだったと感じた。かつてこれを是認していたのが蓮舫氏なのだ。
 他人に厳しく自分たちに甘い――私も含めて人間誰しもそういう傾向はあるのだろうが、蓮舫氏にはその傾向が強いのではないかと感じた。
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