上野通子前首相補佐官も税優遇認める 安倍派からの裏金原資は否定(2024年6月18日『毎日新聞』)

上野通子氏

 自民党上野通子(みちこ)前首相補佐官参院栃木選挙区)が2020年、自らが代表を務める党支部に計740万円を寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けていたことが判明した。毎日新聞の取材に対し、税優遇を受けた事実を認める一方、政治資金パーティー裏金事件で安倍派からキックバック(還流)された資金を原資として寄付したことは否定した。

 栃木県選挙管理委員会毎日新聞に開示した「寄付金(税額)控除のための書類」によると、上野氏は20年1~12月、計13回にわたり計740万円を自ら代表を務める「自民党栃木県参議院選挙区第1支部」に寄付し、税控除の対象として記載した。

 上野氏の事務所は取材に対し、「租税特別措置法上、資金管理団体とは異なり、選挙区支部については控除できないとはされていないことから控除申請をしていた。法律上は問題がないものの、道義的観点から今後の控除は差し控える」と文書で回答した。

上野通子前首相補佐官の寄付金控除に関する書類=2024年6月17日午後10時56分、藤田剛撮影
上野通子首相補佐官の寄付金控除に関する書類=2024年6月17日午後10時56分、藤田剛撮影

 裏金事件に関する自民党の調査などによると、上野氏は18~22年、安倍派からパーティー券収入のノルマ超過分として計318万円の還流を受けた。このうち、20年分は100万円が安倍派(清和政策研究会)からの寄付だったと支部の収支報告書を訂正している。

 上野氏の事務所は、還流分を寄付の原資とした可能性について「一切ありません」と否定した。

 寄付に伴う税控除制度は個人献金を促し、国民の政治参加を推し進める目的で導入された。政治家が自らの後援会に寄付した場合は寄付者に「特別の利益」が及ぶとして控除が適用されないが、政治家が代表を務める党支部については明確な基準がなく「抜け道」と指摘されている。

 自民党が提出した政治資金規正法改正案では、政治家が自ら代表を務める政党支部に寄付した場合、税控除の対象外とする措置を検討することが付則に盛り込まれている。    

 上野氏は10年に参院栃木選挙区で初当選し3期目。23年9月に女性活躍や高齢者・消費者政策を担当する首相補佐官に就いたが、裏金問題を受けて12月に辞任した。【畠山嵩】