政治家の税優遇 寄付制度の悪用許すな(2024年5月30日『東京新聞』-「社説」)

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 自民党派閥の裏金事件を巡り、パーティー収入の還流を受けていた国会議員が自ら代表を務める政党支部に寄付し、所得税の一部を還付されていたことが相次いで明らかになった。個人献金促進のための税制を議員が悪用し、税優遇されていたことは許容できない。今国会での制度改正を求める。
 稲田朋美衆院議員=福井1区、写真(上)=は2020~22年、党支部に計202万円を寄付し、税控除を受けたことを認めた。
 安倍派パーティー収入から還流され、政治資金収支報告書に記載しなかった裏金は寄付に充てていないというが、カネに色はついておらず、説得力は乏しい。
 菅家一郎衆院議員=比例東北ブロック、同(下)=は21年までの4年間に安倍派から還流された不記載の資金を原資にして党支部に寄付し、約148万円の税控除を受けたことを明らかにした。
 租税特別措置法では、個人が政党に寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。両氏は適法な寄付控除だと主張するが、個人献金を促す法の趣旨に反することは明白だ。
 政党支部は政治家の「第2の財布」と呼ばれる。政治家が個人の資金を支部に寄付しても自由に使うことができ、自分の懐は痛まない。党支部への寄付を議員の資金管理団体に還流させることも可能で、個人献金とは言い難い。
 課税されるべき裏金を原資に寄付控除を受けていたのなら、二重の税逃れであり、さらに悪質だ。政治家がこの制度を用いて税優遇を受ける問題はかねて指摘されてきたが、裏金事件を受けて制度の不備がより鮮明になった。
 菅家氏は党支部への寄付控除について「私だけではない」と居直った。ならば、自民党は全議員を対象に実態を調査し、他にも例があるのなら十分な説明と修正申告をするよう指示すべきだ。
 衆院では与野党政治資金規正法改正案の修正協議に入った。野党側は政治家本人による党支部への寄付は税優遇の対象から外すよう求め、自民党は修正案の付則に「検討」を明記した。検討にとどめず、実現を図らねばならない。