少子化に歯止めが掛からない。社会全体で危機感を共有し、対策を講じることが求められる。
1人の女性が生涯に産む子どもの数に相当する合計特殊出生率が2023年は1・20と過去最低になった。出生数も72万7277人と過去最少で、国の予測より10年ほど早いペースで減っている。
日本の少子化対策は仕事と家庭の両立支援と、子育て世帯への経済的支援を柱に進められてきた。1994年に策定された「エンゼルプラン」が出発点だが、30年たっても十分な成果が出ていない。
だが、子育て支援に偏っている面は否めず、効果は不透明だ。
少子化の背景には、結婚する人が少なくなっている現状がある。婚姻数は年々減少し、23年は47万4717組と90年ぶりに50万組を下回った。
結婚や出産をするかどうかは個人の選択だ。ただ、望んでもかなわない人がいるなら、障害は取り除かなければならない。
90年代以降、政府が雇用制度の規制を緩和した結果、不安定な雇用が増え、賃金も伸び悩んだ。働き方や待遇の改善を進めなければ、生活基盤の安定は望めない。
日本社会に根強い性別役割分担意識も変えるべきだ。男性の育児休業取得率は05年度まで1%未満だった。22年度は17%に上がったが、女性の80%には遠く及ばない。
政府は、男性も子育てする「共働き・共育て」を推進する。両親ともに育休を取得した際の給付を増やしたり、男性の育休取得率を開示する企業を拡大したりする。
こうした対策を着実に進めることが肝要だ。
半世紀続く少子化の流れを反転させることは容易ではないだろう。ペースを緩める施策を続けるとともに、人口減時代の社会や経済のあり方について議論を始める必要もある。