「飛ぶ教室」や「ふたりのロッテ」などで知られる…(2024年6月4日『』-「余録」)

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北京市長安街地区付近で市民が放火、炎上した軍の装甲車=1989年6月4日、日本人留学生撮影
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ナチスの“悪書追放”はケストナーマルクスフロイトなどあらゆる分野に及んだ=1933年
 「飛ぶ教室」や「ふたりのロッテ」などで知られるドイツの作家、ケストナーの作品に「五月三十五日」(1932年)がある。「偉大な過去の城」や「電気の都市」など異世界に通じたタンスから、おじとおいが南海へ旅をする
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のび太の机の引き出しから飛び出したドラえもんと設定が似ている。携帯電話や動く歩道、遠隔制御の自動車など未来を先取りするツールも登場する
▲今年はケストナーの没後50年。現実に存在しない日付は「何が起きてもおかしくない日」という。想像力が豊かな作家も将来、この日付が特別な意味を持つとは思いもしなかったろう
▲5月32日が6月1日なら35日は4日。35年前に民主化運動が鎮圧された天安門事件の日だ。「六四」の文字すら規制される中国では「5月35日」が隠語になった。香港では5年前、息子を失った老夫婦を描く劇「5月35日」が上演され、高く評価された
▲約90年前の「焚書(ふんしょ)の夜」で著書を焼かれたケストナーナチスへの非協力を貫きつつ、ドイツに残った。「君の人生はまだ生かされる価値がある。生きぬくこと!」。自分に宛てた手紙に書き、戦後はドイツ文学界をリードした
天安門広場民主化運動を支えた「四君子」の一人で作家の劉(りゅう)暁(ぎょう)波(は)氏は最後まで筆を曲げず、ナチスに弾圧された平和運動家、オシエツキー以来2人目のノーベル平和賞獄中受賞者になった。言論弾圧や監視強化が進む中国や香港にも劉氏のような強じんな精神の持ち主は決して少なくないはずだ。