概(おおむ)ね3年に1度の改定で、今回は2040年度の電源構成目標が示される。その中で焦点となるのが、原子力の位置付けだ。
21年に策定された現行計画では、30年度の電源構成に占める原子力の割合は20%から22%で、「可能なかぎり依存度を低減する」と明記されている。しかし、政府は昨年、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ国際情勢悪化などによる原油急騰を受け、「原発の最大限活用」に方針を大転換。新増設も辞さない姿勢を打ち出した。
今年1月、東京電力福島第1原発事故の「市民検証委員会」が、新潟県民を対象に実施したアンケートの結果では、同県に立地する東電柏崎刈羽原発の再稼働に「反対」と答えた人は60・5%と「賛成」の18・2%を大きく上回る。新増設はおろか、再稼働もままならず、強引な老朽原発の延命に頼らざるを得ないのが実情だ。
3・11を境に原発は「安定供給」を支える電源とは言えなくなっている。
一方、世界を見渡せば、脱炭素の主役は再エネだ。国際エネルギー機関(IEA)は、30年には新規発電設備の8割を再エネが占めるとの見通しを示す。
風力、太陽光の資源豊かな北海道、東北や九州の再エネ電力を本州の他地域へ送り込むための送電網の増強計画も進んでいる。電力融通が容易になれば、「再エネは不安定」とは言えなくなる。
現行計画における再エネ比率は36~38%。次期計画ではより野心的に目標を引き上げて、政策資源を集中すべきだ。安全安心はもちろんのこと、化石燃料の輸入依存から脱却すれば、いたずらな「国富」流出の防止策にもなる。