通学、買い物、水遊び…脅かされる子供の日常 ネット上に氾濫する性的画像・動画(2024年6月2日『産経新聞』)

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盗撮の検挙件数の推移
子供の性的な画像や動画がインターネット上に出回る問題が深刻の度合いを強めている。スマートフォンの発達もあり盗撮が増加する中、交流サイト(SNS)などには盗撮とみられる素材が次々と掲載されていく状況だ。何気なく公開した子供のデータが悪意ある小児性愛者らに狙われるケースもあり、関係者は警鐘を鳴らす。
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■カジュアル化
「JS5またはJS6(小学5、6年生)な感じ」
秘匿性の高いチャットアプリのコミュニティーに、そんな書き込みとともに少女のスカート内を撮影した動画が投稿された。動画の下には好意や賛辞を示すスタンプが20個近く並び、コメント欄には「最高です!」「ごちそうさまです」などと感想が踊る。
別のコミュニティーでは、高校生とみられる女性のスカート内を撮影した動画に500円の値が提示され、盗撮マニュアルの販売もうたわれていた。
「盗撮とみられるこうした動画や画像はSNSなどで容易に共有され、拡散されていく。加害行為の〝カジュアル化〟が進んでいると感じる」
ネットパトロールを行う母親などでつくる民間団体「ひいらぎネット」の永守すみれ代表は、危機感を隠せない。
■増える盗撮
警察庁によると、盗撮被害は近年、増加傾向にあり、令和4年の全国の検挙件数は5737件にのぼる。
発生場所は「トイレや更衣室など衣服を脱ぐ場所」が31・5%と最も多く、「商業施設」(21・1%)、「駅構内の階段・エスカレーター」(19・5%)-が続く。撮影機材はスマートフォンが約8割を占めた。
ひいらぎネットでは、盗撮とみられる子供の画像や動画を発見すると、制服などを手がかりに学校に知らせるほか、地域の警察など専門機関に通報して対応を促してきた。
だが、撮影された画像はSNSで隠語のハッシュタグをつけて拡散されていることも。合言葉を知る人だけが見ることのできるアプリなどが使われ、撮影画像が共有されてしまうこともあるという。
さらに問題なのは「被写体の顔や名前、住所がさらされているケースもあること」と永守氏。特定の子をストーキングして通学途中とみられる様子を写真に収め、ネット掲載する者もいるといい、事態の深刻さを物語る。
■「転用」も横行
 
一方、子供の「ほほえましい姿」をネット上に掲載した画像が、期せずして〝性的素材〟として出回ってしまうケースもある。
こども家庭庁と文部科学省は5月、全国の保育園や幼稚園などに対し、ホームページなどに子供の性的な部位が写った画像を掲載しないよう呼びかける通知を出した。
背景には、子供の親や近しい関係者らがブログなどで公開した半裸や水着姿などの画像が、第三者に勝手にダウンロードされ、小児性愛者らが集うサイトなどに転載されていく実態があるとされる。
児童ポルノ被害対策などに取り組む一般社団法人「セーファーインターネット協会」によると、寄せられる通報の中で散見されるのは、水遊びやトイレトレーニングなどの画像。同協会は児童ポルノに該当すると判断した画像は、サイト運営者に削除要請を行うが、削除前に拡散している恐れもあり、ダウンロード済みのデータが再び別サイトに掲載されるリスクもゼロではないという。
同協会の中嶋辰弥事務局長は「何気なく公開した画像が悪用されてしまうこともある。不特定多数が見る場所には、性的に悪用される恐れのある児童の画像を掲載しないことが被害を防ぐ最善の方法だ」と語った。(三宅陽子)