政治資金規正法の改革で一部合意し、維新の馬場代表(左)と合意書を取り交わす岸田首相(5月31日、国会内)
自民党が公明党、日本維新の会と政治資金規正法改正案の修正で合意し、今国会の成立にメドが立った。パーティー券購入や政策活動費は公開が一部進むが、資金の流れの透明化には程遠い。不正の根絶と活動経費の確保を両立する制度の実現に向けて、各党は議論をさらに深めてほしい。
岸田文雄首相(自民党総裁)は5月31日、公明党の山口那津男代表、維新の馬場伸幸代表と相次ぎ会談し、両党の主張に歩み寄る修正内容を伝えた。公明党と維新は採決で賛成する見通しだ。
合意案は①パーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げる②政党から政治家個人に支出する政策活動費に年間の使用上限を設け、領収書などを10年後に公開する③監査のための第三者機関を設ける――などが柱だ。
自民党はパーティー券の公開基準で当初「10万円超」を提案し、政策活動費の詳細な公開には反対していた。維新とは調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開と残金返納、自らが代表を務める政治団体に寄付した際の税制優遇の禁止も確認した。
自民党派閥のパーティー収入の大規模な還流と不記載は、政治への信頼を損なった。議員が資金を意図的に移動させて所得税の寄付控除を受けるような脱法行為も許されない。法改正が実現すれば一定の歯止めになるだろう。
立憲民主党は国民民主党などと共同で政策活動費の禁止、議員も会計責任者と同等の責任を負う「連座制」導入などの改正案、企業・団体献金や資金パーティーを禁止する単独案を提出している。
事件や不祥事の頻発を踏まえれば、企業・団体献金やパーティー開催を全面禁止する主張にも一理はある。だが個人献金が広がらない現状では、政党助成金への依存度をさらに高め、資金力や知名度が乏しい新人政治家らの活動を著しく不利にしかねない。
自民党は罰則強化をめぐり、議員に収支報告書の「確認書」提出を義務づけ、会計責任者が不記載などで処罰され、かつ議員が必要な確認を怠った場合は議員が失職する仕組みを提案している。連座制をめぐる議論はまだ不十分だ。
今回の法改正によって派閥の裏金事件を幕引きする姿勢は許されない。問題の実態解明と関係者の処分、再発防止策をめぐる議論を加速していく必要がある。