岸田政権にさらなるダメージ 静岡県知事選でも自民推薦候補が敗北 9月党総裁選での再選に黄信号(2024年5月27日『東京新聞』)

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国会で答弁する岸田首相=24日
 川勝平太前知事の辞職に伴う静岡県知事選は26日投開票され、無所属の元浜松市鈴木康友氏(66)=立民、国民推薦=が新人6人による争いを制し、初当選した。無所属の元副知事大村慎一氏(60)=自民推薦=は僅差で敗れた。川勝氏の辞職表明から2カ月足らずの超短期決戦。与野党対決の構図で、野党系が支持した候補が勝利した。
◆裏金事件、国会での政治とカネ論争が投票行動に影響か
 自民党が推薦した元副知事の大村氏が敗れ、岸田政権にとっては衆院3補欠選挙や神奈川県小田原市長選での敗北に続く痛手となる。支持率低迷にあえぐ岸田文雄首相はさらに求心力を失うことになりそうだ。6月23日までの国会会期中の衆院解散がより困難な状況に追い込まれ、9月の党総裁選再選にも黄色信号がともった。
 党本部は当初、大村氏の推薦を見送る方向だった。県連推薦にとどめることで、負けた場合の政権へのダメージを抑えるためだ。しかし、県連に押し切られる形で党本部推薦に至り、結果的に裏目に出ることになった。
 国会では連日、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の審議が行われ、立憲民主・国民民主両党が共同提出した法案に比べて緩い内容にとどめた自民が厳しく追及されている。
 東京新聞を発行する中日新聞社の東海本社が選挙期間中に実施した世論調査でも、46.6%が裏金問題を「重視する」と回答。裏金事件の真相解明や厳格な法改正に及び腰な姿勢が、投票行動に影響を及ぼし、自民党本部推薦という看板を背負った大村氏にマイナスに作用した可能性が高い。
 菅義偉前首相は、選挙の連敗で首相の座から転げ落ちた。2021年の衆参2補選と参院の再選挙の全敗に続き、お膝元の横浜市長選でも肝いり候補者が落選。同年9月の総裁選出馬は断念に追い込まれた。首相は6月から始まる定額減税で政権浮揚を期待するが、裏金事件にふたをしたままではその道のりは険しそうだ。(山口哲人)