空き家問題 人口減の社会で活用法を探れ(2024年5月25日『読売新聞』-「社説」)

 増え続ける空き家を放置すれば、倒壊の危険や治安、景観の悪化につながる。どのように対処すべきか、国や自治体で検討を急ぐべきだ。
 総務省の調査で、全国にある空き家の数が過去最多の900万戸に上ることがわかった。このうち賃貸用などの使用目的がない「放置空き家」は385万戸に達し、20年前の1・8倍に増えた。
 遠く離れた親の家を子供が相続したものの、住む予定もなく、そのままになっているケースが多いようだ。人が住まなくなった家は、湿気がこもって劣化しやすい。
 倒壊の恐れが高まるほか、ゴミの不法投棄や、空き巣などの犯罪を誘発する可能性もある。私有財産だとはいえ、地域への悪影響もあり、放っておけない問題だ。
 人口減に伴い、空き家は今後さらに増えるとみられる。所有者の中には「何とかしなければ」と思いながらも、高齢などの理由で対処できない人もいるだろう。
 国や自治体はまず、地域の空き家の状況を確認し、所有者の意向を丁寧に聞き取ることが重要だ。そのうえで、必要な支援を講じることが求められる。
 対策の柱となるのは、荒廃した空き家の「解体」と、改修して再利用する「活用」である。
 国は、倒壊の危険がある家や、管理が不十分な家を放置し続けた場合、所有者の固定資産税を重くできるようにする制度を設けた。老朽化した家の解体費を手厚く補助している自治体もある。
 こうした制度を周知し、空き家の解体を促す必要がある。
 まだ使える家は、物件を検索できる自治体の「空き家バンク」などに登録し、必要とする人に使ってもらうのが望ましい。移住やリモートワークが広がり、割安な中古住宅の需要はあるはずだ。
 とはいえ、解体か活用か、判断に迷う所有者もいるに違いない。業者選びも難しい。相続する子供たちの間で意見がまとまらず、家族の思いが詰まった家の取り扱いを簡単には決められないという人もいるのではないか。
 東京都世田谷区は、民間のアドバイザーに依頼し、所有者の悩みを無料で聞く相談窓口を設けている。不動産業者や解体業者らと連携し、解決策を探っている。各地で相談体制を整えてほしい。
 空き家を何代にもわたって放置するうちに、所有者が分からなくなり、災害時に解体できず、復興の妨げになることもある。家の取り扱いを、あらかじめ親族間で話し合っておくことが重要だ。