「強制送還」チラつかせ… 日本で暮らす中国人狙う特殊詐欺の手口(2024年5月20日『毎日新聞』)

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特殊詐欺グループから送られてきた書類を手にする女性。「私と同じような被害に遭う人がいなくなることを願っている」と話す(画像を一部加工しています)=東京都内で2024年2月6日午後7時40分、安達恒太郎撮影
 日本で暮らす中国人をターゲットにした特殊詐欺が相次いでいる。電話で中国の公安当局や大使館をかたり、「逮捕」や「強制送還」をちらつかせて金銭をだまし取るのが典型的な手口だ。埼玉県警には2021年以降、被害の届け出が少なくとも9件あり、SNS(ネット交流サービス)を通じて注意喚起している。
 埼玉県警や警察庁によると、特殊詐欺グループは携帯電話に突然連絡をしてくる。公安当局職員や大使館員を装って「あなたの口座が不正に使われているので、逮捕、強制送還される」などと不安をあおり、免れるには保証金が必要と金銭を要求するという。
 誘拐事件を「自作自演」するよう指示する手口もある。拘束・監禁されている様子をスマートフォンで自撮りさせて、中国にいる親族へ動画を送信。身代金名目で現金を振り込ませたケースが確認されている。
 日本で暮らす中国出身の男性(34)は「日本人に比べて中国人は、警察など国の組織に対して警戒感が強い。詐欺グループはそうした心情に付け込んでいるのではないか」と指摘する。そのうえで「『強制送還』という言葉をちらつかされ、パニックになる人もいるだろう」と話した。
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在日中国人を狙う特殊詐欺への啓発のために埼玉県警が作製したチラシ=埼玉県警提供
 
 埼玉県警は、あなたの名義が使用されている▽無罪を証明するため、お金が必要だ▽払えなければ強制送還される――などと、だまし文句を列挙したチラシや動画を作製。中国語でフェイスブック(FB)に投稿し注意喚起している。担当者は「大使館員を名乗る人物から電話があっても1人で判断せず、電話を切って警察や身近な人に相談してほしい」と呼び掛ける。
 また、文部科学省は昨年8月、中国人留学生を受け入れる学校法人などに対し、特殊詐欺の手口を学生に周知するよう求めた。
【安達恒太郎】