与野党〝神経戦〟が号砲 来週から政治資金規正法改正案審議、会期末見据え攻防(2024年5月16日『産経新聞』)

会談に臨む自民党浜田靖一国対委員長(中央左)と立憲民主党安住淳国対委員長(中央右)=16日午前、国会内(春名中撮影)

自民党が16日に政治資金規正法改正の条文案を大筋了承したことで、派閥パーティー収入不記載事件を受けた攻防の焦点は与野党協議の行方へと移る。野党はそろって自民案を批判するが、決して一枚岩とはいえない。来月23日の国会会期末を見据え、各党の思惑や主導権争いも絡む神経戦が繰り広げられることになる。

自民の浜田靖一国対委員長は16日、立憲民主党安住淳国対委員長と国会内で会談し、衆院政治改革特別委員会での法案審議を来週半ばに始めることで合意した。岸田文雄首相が出席する衆院予算委員会集中審議を20日に開くことも確認した。

安住氏は会談で「法案を出す前の事前協議はない」と強調し、自らの規正法改正案を論戦でぶつける姿勢を強調した。

立民は、独自に出す法案に加え、政治資金を監督する第三者機関設置などに関する法案を国民民主党と共同提出することを目指す。野党第一党として、改革を迫る動きを主導したいという意図があるのは明らかだ。

ただ、野党第二党の日本維新の会は立民とは距離を置く。制度改正に先行して自主的に改革に取り組む兆しがない立民の姿勢が、「高めの球を投げて満足している」(馬場伸幸代表)と映っているからだ。維新幹部は「立民は政治資金パーティー禁止を訴えつつ、法改正が実現しなければ平然とパーティーを続けていく気だ」と非難する。

両党の距離感を見透かし、自民は審議での維新の協力に期待を寄せる。維新がこだわる調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開に前向きな姿勢を示したのはそのためだ。

しかし、政府・与党への「是々非々」路線を標榜(ひょうぼう)してきた維新も今回ばかりは手厳しい。遠藤敬国対委員長は16日の記者会見で、自民の条文案を「国民が納得するとは到底思えない」と断じた。

維新は独自の規正法改正案を来週に提出し、自民に揺さぶりをかける構えだ。同時に、不記載事件を奇貨として、停滞してきた旧文通費改革を前に進めることも狙う。

「旧文通費の議論をしていく担保がないと、政治改革特別委の議論に真摯(しんし)には向き合えない」

遠藤氏は、自民にくぎを刺す一言を忘れなかった。(松本学)