脱炭素社会の実現に向けて鍵を握るのは、石炭火力発電の扱いだ。地球温暖化の原因を作ってきた先進国は、率先して脱石炭に取り組まなければならない。
主要7カ国(G7)は、二酸化炭素(CO2)の排出削減措置が取られていない石炭火力を2030年代前半までに廃止することで合意した。先月末、イタリアで開かれた気候・エネルギー・環境相会合で採択された共同声明に盛り込まれた。
火力の中でも最も排出量が多い燃料だ。ただ、安価で安定供給が見込めるため、国益も絡んで各国の主張は対立し、廃止を巡る議論はなかなか前進しなかった。
それだけに今回、G7が合意にこぎつけた意義は大きい。
とりわけ姿勢が問われるのは、石炭火力が発電量の3割を占める日本である。
政府は今回の共同声明について、「現行のエネルギー政策に大きな変更は迫られない」と説明している。産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える対応が取られるならば、廃止期限が猶予される余地があるためだ。
日本は、燃焼時にCO2が出ないアンモニアと混ぜて燃やす「混焼」などの新技術を活用することによって、排出量を減らすことができると主張している。
しかし、削減効果が疑問視されており、「石炭火力の延命策」との批判は根強い。
世界2位の排出国である米国は、石炭を含む火力からの排出量を90%削減する規制を32年から始める。欧州では石炭火力の廃止に向けた動きが広がり、欧州連合(EU)は、規制の緩い国からの輸入品に国境炭素税をかける制度を導入している。
日本が脱炭素化に消極的だと受け止められれば、企業の競争力にも影響が出かねない。再生可能エネルギーを拡大し、そのための蓄電容量を増やす必要がある。
昨年夏、北半球は過去2000年間で最も暑かった。温暖化対策に一刻の猶予もない。G7は脱石炭の道筋を早急に示すべきだ。