「点数を付けるとすれば0点だ。審議を最初からやり直してほしい」――。13日に教員確保策を取りまとめた文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の特別部会。審議を傍聴した現職教員、大学教授、弁護士らの3団体が同日夕、東京都千代田区の文科省内で合同記者会見を開き、教職調整額の引き上げを含む方策は長時間労働の抑制につながらないと批判した。
この日の特別部会では、残業代を支払わない代わりに教員に一律支給する教職調整額を規定する教員給与特別措置法(給特法)の枠組みを維持し、支給割合を現行の給料月額4%から10%以上に引き上げる方向性を各委員が了承。「給特法の抜本的な見直しを検討課題としてもらいたい」との意見も出たが、方策には盛り込まれなかった。
給特法のあり方を考える「有志の会」として活動してきた岐阜県立高校教員の西村祐二さん(45)は会見で「給特法の抜本改正に向けた議論が尽くされなかった。この先、継続的に審議するということにならないと我々は希望を失う」と憤った。
長時間労働を是正するとともに残業に見合った対価を支払うべきだと主張を続けてきた。西村さんによると、この1年で知り合いの教員2人が多忙によるとみられる精神疾患で退職。別の知人は特別部会の議論に希望を持てず早期退職を考え始めたという。
西村さんは「新しい教員を確保するどころか、中堅層にも失望を与えている。教育現場には雨が降り続いており、このままだと公教育が崩壊する」と語気を強め、方策をテストと見立てて「0点」を付けた。
教員の長時間勤務解消を求める署名活動に取り組んできた有識者の会からは、筑波大の浜田博文教授(学校経営学)ら3人が会見に参加。浜田教授は「教員は同僚や児童生徒、保護者と向き合う仕事を優先しなければならず、専門職としてやるべき授業の準備や教材研究を後回しにせざるを得なくなっている」と指摘。教員を増やして1人当たりの授業数を減らすべきだとし、学級数に応じて学校ごとの教員定数を定めた義務標準法について「改正を正面から議論しないといけない」と主張した。