プーチン政権 5期目も続く横暴をくじけ(2024年5月8日『読売新聞』-「社説」)

 プーチン政権が侵略戦争で勝利することになれば、世界史の大きな汚点となるだろう。
 国際社会はウクライナ侵略を成功させてはならない。その一点で、各国は結束を強める必要がある。
 プーチン大統領が、通算5期目となる政権運営を始めた。任期は6年間で、2030年までだ。ロシア憲法では、さらにもう1期務めることも可能である。
 就任式の演説で、プーチン氏はウクライナ侵略に参加する兵士をたたえたうえで、「西側との対話は拒否しない。選択するのは彼ら次第だ」と述べた。
 ウクライナを巡り、交渉を拒んでいるのは米欧だと主張したつもりのようだが、その言葉にだれが同調するだろうか。
 5期目でもウクライナのゼレンスキー政権を倒し、外交や安全保障政策の独立性を奪って「属国化」する方針を貫こうとする野望を容認してはならない。
 ウクライナ侵略を開始後、プーチン政権の軍の立場への配慮は際立っている。
 ロシアの国内総生産(GDP)が昨年、3・6%のプラス成長を記録したのは、軍の要望に応じ、軍需産業に巨額の予算を投じたことが要因と分析されている。
 今春には、侵略に参加した軍人を政府や国営企業などの幹部に積極的に登用する制度も整えた。軍人への論功行賞を明確にすることで、軍のプーチン氏に対する忠誠を固める狙いがあるようだ。
 ロシア政府は、米欧日などの経済制裁に効果はないと強弁したいようだが、軍需主導の成長には限界があるはずだ。国民生活を軽視した政策を続ければ、中長期的に経済は衰退に向かうだろう。
 ロシアは侵略戦争を有利に進めようと世論工作を行っている。
 スロバキアでは昨年の総選挙前、SNS上にウクライナ支援に反対する書き込みが広がった。フィンランドでは北大西洋条約機構NATO)への加盟に反対する書き込みが拡散した。
 これらの情報はロシアも発信元とされる。国際社会は、民主主義陣営を分断しようとするロシアの謀略に惑わされてはならない。
 中国はロシアとの貿易を拡大しており、事実上、ウクライナ侵略を下支えしている。ロシアが消耗し、自国への依存を強めることが利益になると、中国は計算しているのだろう。
 中国に対露支援を停止するよう粘り強く説得することもまた、日本を含む西側諸国の責務だ。