「6月は地獄」祝日なく悲痛な声 GW後に待ち構える”空白期間”(2024年5月6日『毎日新聞』)

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6月のカレンダーに祝日はない(写真はイメージ)=ゲッティ
 大型連休が終わりを迎えた。「えっと、次の祝日はいつだっけ」と、うつろな目でカレンダーを眺めた人はお気づきだろう。次の「海の日」(7月の第3月曜日)まで69日間も祝日がないのだ。SNS(ネット交流サービス)上では「6月は地獄」「6月祝日つくれ」など悲痛な投稿が目に付く。実際に新たな祝日制定を求める動きもあるが、実現の可能性はあるのか。
 
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 ◇祝日がない6月と12月
 祝日は基本的に議員立法で定められる。これまでに議員立法による法改正を重ね、現在は年間16日の祝日がある。
 最新の祝日は2016年に新設された「山の日」(8月11日)。超党派の国会議員でつくる「山の日」制定議員連盟祝日法の改正案をまとめ、当時の与野党が共同提出し、8月にも祝日が誕生した経緯がある。
 では、なぜ6月に祝日はないのだろうか。祝日法を所管する内閣府の担当者は「特に理由はないです。祝日法は国会で議論し、国民に広く理解してもらって定めることになっています」と説明する。
 6月と同じく祝日がないのが12月だ。だが、11月23日の勤労感謝の日から元日まで、祝日のない期間は5月の大型連休明けから海の日までの半分ほどの38日間に過ぎない。
 ◇新たな祝日候補
 祝日の「空白期間」を短くするための具体的な動きもある。
 大阪市阿倍野区で時計店を営む、NPO法人日本時計学技術研究会代表の玉田寿夫さん(70)らが求めるのは、6月10日の「時の記念日」を祝日にすることだ。
 「海の日なんて突然に出てきた。それに比べたらずっと歴史がある」。玉田さんが言うように、「時の記念日」の起源は古い。
 天智天皇が671年に漏刻(ろうこく)と呼ばれる水時計などで初めて時を人々に知らせた日が、現在の暦で6月10日に当たるのが由来で、日本書紀に基づく。
 記念日となったのは、1920(大正9)年。渋沢栄一らが役員として名を連ねた「生活改善同盟会」が「時間を正確に守ること」を目標に掲げ、「時間尊重」の考えを広めるために働きかけた。
 「日本人は、時間を守ることについては他の国を寄せ付けません。その正確さはどこから来たのか、年1回くらい考えてもよいのではないでしょうか」
 玉田さんは、時の記念日を広く知ってもらいたいとの思いで、5年ほど前から国会議員に祝日化を要望するなど活動をしている。
 一方、空気をご神体とする空気神社がある山形県朝日町は、世界環境デーの6月5日を、町の条例で「空気の日」と制定。「空気の日」を祝日にするよう求める意見書を町議会が国に提出してきた。
 ◇良いことばかりではない?
 では、6月に祝日が誕生する可能性はどれほどあるのだろうか。
 内閣府の担当者は「余暇時間が増える一方、病院が休診となることで困る人もいる。経済も止まる。祝日が増えることが一概に良いとは言えない」と慎重だ。【畠山嵩】