三社祭 気温以上に「熱い」渡御 雷門中部町会神輿を記者体験 担ぎ手の優しさに触れ(2024年5月19日『東京新聞』)

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浅草寺の参道を進む雷門中部町会の神輿=いずれも台東区
 浅草神社(東京都台東区)の三社祭は18日、約100基の神輿(みこし)が町中を練り歩く「町内神輿連合渡御」があった。浅草の取材拠点、したまち支局に配属されて2カ月半の記者(31)も、支局がある雷門中部町会の担ぎ手として参加させてもらった。(鈴木里奈
 午後2時過ぎ。浅草寺本堂前を「エッサ、オイサ」と威勢のよいかけ声とともに進んでいく神輿は上下に激しく揺れていた。あまりの迫力に尻込みしていると、担ぎ棒を持っていた女性が「おいで」と招き入れてくれた。自分の肩より高い位置にある担ぎ棒が、肩にガンガンとぶつかる。痛みをごまかすように、一緒にかけ声を上げる。
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神輿を担ぐ鈴木里奈記者(中央)
 伝法院通り、浅草観音通り商店街-。華やかなエリアをたくさんの人が交代しながら神輿を担ぐ。担ぎ棒から離れても手拍子を打ったりして盛り上げている。「一番前に来なよ」。時には神輿の先頭に入れてもらい、熱気を感じながら下町を巡った。
 いったん神輿から離れ、しばらくしてからまた担ぐと、今度は担ぎ棒にぐっと肩をあてることができた。疲れはあるが、周囲からのかけ声やエールで力が湧いてくる。この日の東京は夏日。担ぎ手は全員汗だくだが、誰も気にしない。前後の人とぴたり密着し、神輿と一体となって一つの生き物になったようだった。
 午後5時ごろ、町会の詰め所に戻って神輿を下ろし、三本締めで終了。担ぎ手たちの優しさに触れ、この町に受け入れてもらえたような、気温以上に「熱い」渡御だった。 
 

三社祭 「ハイ」「サー」女神輿 威勢よく 吉原神社では本社神輿渡御(2024年5月19日『東京新聞』)
 
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担ぎ手が全員女性で氏子区域を進む吉原神社の本社神輿=台東区千束で
 例大祭が開かれている吉原神社(東京都台東区千束)で18日、宮神輿(みこし)が氏子区域を練り歩く本社神輿渡御が行われた。江戸時代には遊郭の遊女や芸者ら、多くの女性が活動した吉原の祭りらしく、女性だけが担ぐ「女神輿」も、かけ声とともに熱気を伝えた。
 神輿は「祭りで町をまとめよう」と、2015年に造られ、当初から女神輿も行われていたという。午後4時過ぎ、神社を出発した神輿は、町のメインストリートの途中で担ぎ手を全員女性に交代。「ハイ」「サー」という威勢のよいかけ声に合わせ約170メートルを練った。
 黒留め袖のすそから赤い腰巻きをのぞかせるそろいの衣装で担いだ女性神輿団体「緋女(ひめ)会」の須藤紀子代表(65)=川崎市=は祭りをもり立てたいと7年ほど前から参加。「年々にぎやかになってうれしい」と話していた。今年は初めて、「江戸吉原女木遣(おんなきやり)保存会」の音頭で宮入りが行われた。(小形佳奈)
 

三社祭 屋根新調 町会神輿デビュー(2024年5月19日『東京新聞』)
 
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屋根を新調した神輿を担ぐ氏子ら
 東京・浅草寿町四丁目町会は、屋根を新調した町会神輿で連合渡御に臨んだ。
 大曽根良次町会長(78)によると、町会神輿は1960(昭和35)年に造られ、80年に復元修理をしたきりだった。漆塗りのひびが目立つようになったため、修理に踏み切った。費用は積立金と住民から集めた祭礼費でまかなった。
 新しい屋根は、大きく反った「唐破風型」から、なだらかな「三社型」に。頂上には、金箔(きんぱく)を塗り直した鳳凰(ほうおう)が輝く。白木だった胴部分の竜や雲の彫刻には鮮やかな彩色が施された。
 担ぎ手たちからは「前より重い」という声が上がった。町会青年会の吉田和寛さん(50)は「さらに立派になった神輿で新しい歴史を紡いでいきたい」と笑顔で話していた。(小形佳奈)