プリメントによる健康被害を受け、消費者庁は国に機能性表示食品として届け出のある約7千製品を緊急点検した。小林製薬の製品以外に医療従事者からの健康被害報告が11事業者の18製品で計117件確認された。12日公表の速報値。死亡は確認されていないが、入院した事例もあった。
摂取との因果関係が確認されないものも含まれるというが、事業者が報告していない事例の存在が点検で明らかになった形だ。報告が義務付けられていない制度の課題が浮かび上がったといえる。
機能性表示食品のガイドラインには、健康被害に関して「発生および拡大の恐れがある場合は、消費者庁へ速やかに報告する」とある。だが「拡大の恐れ」をどう評価するかや「速やかに」の期間は明確に示されていない。報告の判断が事業者任せになっている面は否めない。
重大な被害の報告が遅れれば、多くの人命に関わる事態につながりかねない。被害の拡大防止を図る上で迅速な報告と公表は不可欠。曖昧な報告基準を見直し、速やかな報告の徹底を図る必要がある。
小林製薬は最初の被害把握から報告まで2カ月超を要した。原因が分からなかったためとしている。今回の緊急点検で判明した健康被害の事例では、事業者が「消費者庁への報告は不要」と判断していた。こうした判断が適切だったのかを、国は検証するべきだ。
機能性表示食品は「体脂肪を減らす」など体へのさまざまな効能を表示できる制度。2015年、安倍晋三首相(当時)が掲げた成長戦略の目玉の一つとして始まった。
機能性や安全性の科学的根拠を示して国に届け出るだけで、事業者の責任で表示できる。国が審査するわけではない。事業者からすれば手軽だ。
研究データや論文などの科学的根拠については消費者の判断材料として公表されている。だが、体への効能をうたう製品が信頼できるかどうかの判断は、消費者がすべきことなのか。
特定保健用食品(トクホ)は国が機能性や安全性を審査して許可する仕組みとなっており、異なる。ただ消費者が機能性表示食品をトクホと同じ国の「お墨付き」と誤って認識している例もあるという。混乱を招くような制度の在り方は疑問だ。
23年の機能性表示食品の市場規模は6865億円で、5年で3倍超に拡大した。健康維持などを目的に定期的に摂取する人は少なくないだろう。それだけに、今回のように製品に問題があった場合の影響は大きい。
消費者庁は専門家による制度の検討会を設置し、その意見を踏まえて5月末をめどに、今後の在り方の方向性を取りまとめるとしている。制度を多角的に見直し、安全と信頼を高めなければならない。