全米各地の大学などでイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に抗議するデモが広がっている。民間の犠牲者が増える中、イスラエル寄りの姿勢を取る民主党のバイデン大統領に対する批判も強まり、秋の大統領選に影響する可能性が出てきた。(米ミシガン州ディアボーンで、鈴木龍司)
◆「支持者なし」抗議の白票が10万票を超えた
4月26日、首都ワシントンのジョージ・ワシントン大キャンパス前で、バイデン政権などに抗議する学生たち=いずれも鈴木龍司撮影
中西部ミシガン州ディアボーン市は「自動車の街」として有名なデトロイト市に隣接し、人口約11万人の半数ほどをイスラム教徒が占める。地元のミシガン大ディアボーン校には、頭にヘジャブを着けたイスラム教徒の女子学生が目立つ。
アラブ系のマラムさん(19)は「バイデン氏は大量虐殺に手を貸している。大統領選で投票するつもりはない」と語った。非アラブ系の学生の不満も根強く、マニー・ブルックスさん(22)は「女性や子どもが殺される状況は許し難い」と批判した。
バイデン政権はイスラエルの侵攻に「深い懸念」を表明しつつ、年間数十億ドル規模の軍事支援を続ける。政治に影響力が強いユダヤ系への配慮とみられるが、2月末に同州で投開票された民主党予備選ではアラブ系やリベラル層の怒りが噴出。「支持者なし」とする抗議の白票が全体の13%強の10万票余に達した。
◆「アラブ系とイスラム教徒が次の大統領を決める」
同州での白票運動の中心を担ったアッバス・アラウィーさん(32)は「バイデン氏は私たちの声に耳を傾けていないと感じた」と動機を明かす。事前に停戦とイスラエルへの援助の中止を働きかけたが、反応は薄かったという。
2020年の大統領選はバイデン氏が同州で15万票差をつけてトランプ氏を破った。アラブ系の支持も勝因に挙げられ、シブラニさんは前回、「トランプ氏の選択肢はない」とバイデン氏を推した。ただ「もう大統領としてみていない。今回、彼は負けるだろう」と突き放す。予備選前にバイデン陣営の選挙幹部の訪問を受けたが、「もう会わない」と伝えたという。
◆差別的なトランプ氏を利しても「気にしない」
パレスチナ出身のスフィアン・ナブハン事務局長(54)は「私たちの税金が私たちの家族を殺すために使われている」と批判。アラブ系に差別的な発言を繰り返してきたトランプ氏を利するとの見方もあるが「気にしない。バイデン氏はアウトだ」と断言した。
パレスチナ自治区ガザの人的被害 ガザ保健当局などの集計によると、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の衝突から半年でガザの死者は約3万3100人、子どもの死者は約1万4500人。米調査会社ギャラップが3月に公表した世論調査では55%がイスラエルの軍事行動に反対。民主党支持者の反対は75%に上った。