教員の働き方 処遇と負担 一体で見直せ(2024年9月17日『西日本新聞』-「社説」)

 

 文部科学省は、公立学校教員の処遇や働き方を改善する費用を2025年度予算の概算要求に計上した。

 半世紀ぶりの改革が含まれる。意義のある一歩だが、初めの一歩に過ぎない。

 教員が働きやすい環境づくりは、さまざまな面から取り組む必要がある。学校現場の実情に合った対策を継続しなくてはならない。

 焦点の一つは教職調整額の扱いだった。教員に残業代を支給しない代わりに、月給の4%相当を上乗せしている制度だ。この割合を13%に引き上げる。文科省は来年の通常国会に教員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出し、26年以降の実施を目指す。

 文科相の諮問機関である中教審は8月の答申で、教職調整額を10%以上に引き上げるよう求めていた。大幅な増額は「定額働かせ放題」と批判される教員の長時間労働、それに伴うなり手不足への危機感の表れだろう。

 引き上げが実現すれば、給特法が施行された1972年以来初めてとなる。

 この間に教員の仕事は多様になり、忙しさが増した。22年度の残業時間は、国の指針で上限と定める月45時間を小学校で65%、中学校で77%が超えていた。

 現状の給与は勤務実態に合っていない。将来は時間外勤務に応じた残業代を支給すべきだ。

 概算要求には小学校の教科担任の増員、教員の業務支援スタッフの拡充なども盛り込んだ。教員の処遇改善、段階的な増員、働き方改革を一体で進めることが、実効性のある現実的な対応と言える。

 予算が大きく膨らむため、財務省との折衝は難航が予想される。教員の窮状は教育の質に影響しかねない。大局的な判断を求めたい。

 きつい職場には人材が集まりにくい。23年度採用の公立学校教員採用試験の受験者は前年度より約5千人減った。かつて10倍を超えた競争率は過去最低の3・4倍となり、大分県の小学校の1・3倍は全国で最も低かった。

 新規採用ができても教員不足は厳しさを増す。多くの学校が病気、産休、育休などで生じた欠員を管理職や退職者で補っている。教員志望者が減ったため、臨時採用できる人材を欠く状況が続く。

 やりがいを持って教員を志望する人材を安定して確保するためにも、処遇と働き方の一体改革は急務だ。

 教員の大切な仕事は児童や生徒に寄り添い、心身の成長を支えることである。その時間すら十分に確保できない現状は、やはり看過できない。

 学校や地域で取り組めることもあるだろう。

 ベテラン教員の豊富な知識は、経験の浅い若手の負担軽減に役立つ。研修や会議の頻度の見直し、部活動の地域移行は教員同士で率直に話し合って決めたい。校長や教育委員会は、こうした雰囲気づくりにも努めてほしい。