小池氏の大学卒業を認めるカイロ大学長名の2020年の声明文を巡り、知事の元側近の小島敏郎氏が、声明文は知事側で作成した可能性があると告発。小島氏は知事から相談を受け「カイロ大学から、声明文を出してもらえばいいのではないですか」と対策を提案したという(※詳しい内容は「文藝春秋」、または「文春オンライン」の記事で読んでください)。
テレビ・新聞が報じない理由
大変なものを読んでしまった、大騒ぎになると私は感じたが、テレビや新聞ではほぼ報じられなかった。これはなぜなのか。すると次の記事を見つけた。
『元側近の「爆弾告発」 主要メディア黙殺のナゼ』(日刊ゲンダイ4月16日付)
この中で「民放の報道番組スタッフ」がコメントしている。
「小島氏の手記を一読した時は『小池知事はここまでやるのか』と驚きました。しかし誰が文案を作成したにせよ、知事の卒業を今もエジプト大使館とカイロ大が認めている以上、疑義を挟む小島氏の告発に乗るわけにはいかない。告発には卒業を覆す決定的証拠の提示もなく、慎重に扱わざるを得ないのです」
なるほど、今回はあの声明文作成の「プロセス」が明かされたから読者は驚愕したのだが、エジプト大使館とカイロ大学が認めているという「結果」は変わっていない。小池氏にとっては心強い「結果」だ。
それならもっと気になることがある。もし小島氏の告発どおりなら「小池知事が誰に『借り』を作ったか?」は政策にも影響していないだろうかという点だ。これは税金を納めている東京都民には直接関わってくる案件である。
誰に借りを作ったか?
たとえば「週刊文春」(4月25日号)には「疑惑のカイロ大声明」によって再選を果たした小池氏は「二期目に入るやエジプト関連予算を一気に増額させている」と振り返っている。このバラマキにはどんな意味があるのか。都民としては考えてしまう。
さらに小島氏の告発に戻すと、4年前の学歴詐称問題における都議会対策で、
と述べている。火消しを自民重鎮らに頼ることで「借り」をつくったことが政治にも影響していることになる。さらに、自分の秘密を守るために権力を保ち続ける必要も出てきた可能性もある。
《それゆえ、小池さんは、都議会多数派と足並みをそろえ、都庁官僚の支持を得て、権力を持ち続けること自体が最優先になっています。》
そういえば先日「7億円の都庁プロジェクションマッピング」は税金の無駄遣いではないかとSNSなどで批判されたが、あれも都庁官僚の言うままと考えればなるほどと思えてくる。
「思いつきで言ったのです」
こう考えると小池氏は自身の権力を保つために動き、ウケると感じれば思いつきで政策に取り入れている姿が見えてくる(皮肉なことに声明文を作成したという過程にそっくりである)。野心家の政治家を見物するには興味深い話だが、しかし税金の使われ方という点を考えると大きな問題ではないか?
さて、そんな混沌とした状況の小池百合子氏を私は見に行くことにした。先週火曜の午前11時。亀戸駅前に向かった。衆院東京15区補選の告示日だ。出馬する乙武洋匡氏陣営の第一声の場に小池氏も応援で登場するという。
どんな聴衆がいて、どんな雰囲気なのか?
街頭演説に行ってみた!
すると、やはりというべきか小池氏が登場すると(いやその前から)聴衆からはヤジが飛んでいた。『ヤジと民主主義』という映画もあるように聴衆のヤジも現場によってはあるだろう。小池氏の「混沌と騒然」を確かに見られたのである。
しかし予想外のこともあった。聴衆だけではなく、なんと候補者からもヤジ、いや、罵声が飛んだのである。
どういうことか?
他の陣営が乙武氏陣営の街宣カーのすぐ隣につけていたのだ。そして拡声器を使って「演説」していた。しまいには乙武氏や小池氏の目の前までいったり、電話ボックスにのぼって「演説」していた。かなりの大音量なので乙武氏や小池氏の演説がよく聞こえない。
今まで街頭演説の場はマナーというか「そういうことはしないよね」という前提で成り立っていたのが、そうではなくなっていた。私は選挙カーが別の陣営とすれ違うときに「○○候補のご健闘をお祈りします」とエールを送ることが「わざとらしいけど大切」だと思っていたが、そういうマナーが無視されてしまったら……。この日の乙武氏陣営は次の街宣スケジュールを公表していなかった。せっかくの街頭演説なのに。
私は一緒にこの光景を見ていたラッパーのダースレイダーと「今後の選挙現場に影響を及ぼさないか? 民主主義にとって深刻な課題になるかもしれない」と語り合った。一方でこの日の凄まじい光景はテレビではあまり報道されないだろう。なので現場に来て良かったと思った。選挙戦を語るうえで大事なテーマに気づけたからだ(このコラムもそう)。
小池氏の対応は…
さて、そうしたなか小池氏を見ていたら凄かったのだ。他陣営の「演説」には目もくれず、何事もないように笑顔で悠然と手を振っていた。平然と演説していた。さらに演説の終盤には中東情勢の解説をし始めたのだ! ふわっとした解説に思えたが「カイロ大卒」をアピールしているように思えた。本当にいいものを見た。やはり現場に来て良かった。あえてこういう表現をさせてもらうと、小池百合子はとんでもないタマだと痛感した。
今回の告発や今後の政治活動など小池氏をめぐる「騒然」はどうなるのか? 演説現場のように何事もないように笑顔で悠然といくのか。注目せざるを得ないのである。