学術会議改革 税金の投入を極力減らせ(2024年4月22日『産経新聞』-「主張」)

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日本学術会議のあり方を検討する政府有識者懇談会後、記者団の質問に答える座長の岸輝雄東京大学名誉教授=21日午後、東京都千代田区内閣府(春名中撮影)
 
 「国の特別機関」という位置付けになっている日本学術会議の法人化に向け、内閣府有識者懇談会は具体的な在り方を検討するための作業部会を設置し議論を始めた。
 内閣府は昨年12月に方針をまとめ、国から独立した法人にすることを決めている。方針には、財政的支援の実施や、外部有識者による評価委員会を設け、運営状況などを評価させることが盛り込まれた。
 方針を踏まえて今回設置したのが、「組織・制度」と「会員選考」を議論する2つの作業部会だ。評価基準や選考方法などの詳細を詰める。
 学術会議は国から独立した組織になり、会員は特別職の国家公務員ではなくなる。任命も学術会議側が行う。一方、国を代表するナショナルアカデミーという位置付けは残し、税金も投入する。国民のために働く法人にしなければならない。
 作業部会設置を受け、学術会議の光石衛会長は「社会から求められる役割を十分に発揮できるような検討が行われるよう、議論に主体的に参画し、主張していく」という基本的考え方を示した。「社会から求められる役割」をどう認識しているかが問われる。
 学術会議は昭和25年と42年に軍事目的の科学研究を拒否する声明を出し、それらの継承を平成29年の「軍事的安全保障研究に関する声明」で宣言した。一連の声明は国民を守るための防衛力の充実につながる研究を阻害してきた。
 学術会議がすべきは、これらの誤った言動を反省し、声明を撤回することである。
 問題はほかにもある。中国が「核汚染水」とレッテルを貼った東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出でも、科学的知見に基づく十分な反論をしているとはいえない。国民のために働いていないではないか。
 令和2年に会員の任命権者である菅義偉首相(当時)が、元会員候補6人を起用しなかったことをめぐり、いまだに任命を求めているのはあきれる。
 光石氏は基本的考え方で、国の責任で安定的な財政基盤が継続的に確保され、かつ強化されることを求めた。過去の言動を改めず、国民のための組織に生まれ変われないのであれば、税金への依存を減らし、自ら資金を集めるのが筋であろう。