ナンバー1広告 客観的な裏付けが欠かせない(2024年4月22日『読売新聞』-「社説」)

 客観的裏付けがないのに「人気度ナンバー1」などとうたう誇大な広告が横行している。商品やサービスを選ぶ重要な判断基準となるだけに、監視の強化が必要だ。
 ナンバー1広告は本来、企業や商品、サービスが、何らかの基準で比較して、他社より優れていることを示す広告手法である。公平で客観的な調査や、売上高などの具体的な指標を使って、その出典を明示すべきものだ。
 しかし、印象だけで「満足度」などを尋ね、広告に利用するような悪質な事例が後を絶たない。
 日本広告審査機構(JARO)には、「勝手に業界ナンバー1をうたっている」「何についてのナンバー1かわからない」といった苦情や相談が、2019年度からの4年間で、350件以上、寄せられたという。
 客観的調査に基づき、データを正しく引用することを定めた景品表示法の趣旨に反する。消費者を欺く行為と言わざるを得ない。
 消費者庁は今年2月、「海外旅行者が選ぶNo.1」などと宣伝していた旅行者向けの通信機器レンタル会社に対し、再発防止を求める行政処分を行った。
 根拠となる調査は、事業者から委託された会社が、回答者に対し実際に事業者や他社のサービスを利用したかどうかを確認せず、インターネットのホームページの印象を聞いたものだった。
 昨年1月に消費者庁の処分を受けた家庭教師派遣会社は、他の大手7社を回答の対象から省いた上、受講者と無関係な人も答えた調査を基に、「口コミ人気度No.1」などと宣伝していたという。
 処分にまで至る事例は、氷山の一角とみられている。その種の広告が横行するのは、インターネットを使って市場調査が容易に行えるようになったことが大きい。
 市場調査会社が「日本一は作れる」「1位にならなければ返金する」などと言って、事業者に持ちかける例も多い。1位を取るまで項目を変えて調査を続け、1位になった瞬間に継続調査を打ち切る悪質なケースもあるという。
 消費者庁は、ナンバー1広告の実態調査を進めている。悪質な広告には行政処分を行うなど、厳正に対処せねばならない。
 市場調査会社の業界団体も、ナンバー1広告の客観性に関する自主規制ルールを設けている。順守を徹底してほしい。事業者も、信頼性を欠く調査結果を安易に使えば自社の企業価値を損なうことを自覚し、点検を徹底すべきだ。