NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルは…(2024年4月22日『毎日新聞』-「余録」)

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「仕事の上では男女の差別はありません」と語る三淵嘉子・新潟家裁所長(当時)=東京家裁
 
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日本弁護士連合会の会長になった渕上玲子さん=東京都千代田区で2024年2月9日午後7時48分、飯田憲撮影
 
 NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルは、三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんだ。1940年に女性で初めて弁護士になった。納得できない時の口癖「はて?」はドラマの創作のようだが、自身が味わった悔しさを書き残している
▲法律を勉強していることを知人に話すと驚きあきれられ「他人には言うまいと決心した」。民法の講義で女性の地位の惨めさを知り「じだんだ踏んだ」。法律家になるための試験会場で、裁判官募集の書類に「帝国男子に限る」とあった。同じ試験を受けているのに、と憤りを覚えた。「男女差別に対する怒りの開眼」だったという
▲先人の業績を調べた佐賀千恵美弁護士の著作「日本初の女性法律家たち」に紹介されている。戦前は、女性に参政権がなく、結婚すれば「法的無能力者」として夫に財産を管理されていた
 
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▲戦後、三淵さんは裁判官に就いた。新潟家庭裁判所で初の女性裁判所長になった。定年退官後、「男性と同じように生きてきた」と振り返っている。男女平等をうたう現憲法下でも、長らく男性優位の社会が続いてきた
▲女性法律家の誕生から80年以上を経て、今年、渕上玲子(ふちがみ・れいこ)さんが日本弁護士連合会の会長に就任した。法曹三者(ほうそうさんしゃ)と呼ばれる裁判官、検察官、弁護士のそれぞれの組織で、女性がトップに就くのは初めてだ
▲昨年3月時点で、全国の弁護士に占める女性の割合は20%にとどまる。裁判官や検察官も3割に満たない。多様性ある社会の実現に向け、人権を守る法律家が果たすべき役割は大きい。
 
三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち Tankobon (ハードカバー) – 2023/12/18
佐賀 千惠美(著)  
 
【目次】
1938(昭和13)年、まだ女性に選挙権がなかった頃、司法試験に合格した女性たちがいた。三淵嘉子、中田正子、久米愛。1940(昭和15)年、3人は日本初の女性弁護士となる。 当時の社会で、女性法律家の誕生は、目が覚めるような出来事だった。

のちに、三淵は日本初の女性裁判所長に、中田は日本初の女性弁護士となった会会長に、久米は日本婦人法律家協会初代会長になる。 日本の女性史、法律家の歴史に確かな業績を残した3人だったが、彼女たちの歩いた道は一時平らなものではなかった。太平洋戦争、司法における女性差別、仕事と家庭生活との両立。 そんな女性法律家の黎明期を、彼女たちは、草分けとしての自負と持ち前のハングリー精神で生き抜いた

。著者の精緻な取材により、3人の足跡を記録したドキュメンタリー『華やぐ女たち女性法曹のあけぼの』の再版。
【内容紹介】
はじめに
目次

第一章女性弁護士の誕生
第一節女性が弁護士になった
第二節 女性に法律なんて
第三節 明治大学女子部の沈み

第二章 三淵嘉子—初の、女性裁判長
第一節 女性裁判官の草分け
第二節 嫁に行けない
第三節 プロフェッショナル—司法科試験に合格
第四節 結婚
第五節 地獄の日々
第六節 お役人になる第七節
裁判いよいよ官に
第八節 名古屋へ
第九節 再び東京へ
第一〇節 再婚
第一一節裁判所長に
第一二節 退官の日
第一三節 野に下る
第一四節 世を去る

第三章 中田正子—女性初の弁護士会
第一節 たった一人の生存者
第二節 生い立ち
第三節 法律を志す
第四節 弁護士となる
第五節 結婚
第六節 戦いのあと
第七節 議員の妻
第八節 母として
第九節 おしどり夫婦
第一〇節 女性で初の弁護士会
第一一節 砂丘
補記

第四章 久米愛—女性法曹のフロントランナー
第一節 三つの個性
第二節 足跡
第三節 出会い
第四節 人生を開く—結婚と合格
第五節 キャリアウーマン
第六節 戦争
第七節 炎跡からの動き
第八節 妻として、母として
第九節 国連の仕事
第一〇節 弁護士の仕事
第一一節 最高裁の判事に推される
第一二節 人生観
第一三節 世を去る
補記