小林製薬の紅麹 培養槽に水混入「トラブル」も原因特定は長期戦か(2024年4月22日『毎日新聞』)

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紅麹(こうじ)コレステヘルプ=東京都千代田区で2024年4月8日、前田梨里子撮影
 
 小林製薬が紅こうじサプリメントでの健康被害を3月22日に公表してから1カ月。厚生労働省小林製薬から提供を受けた原料のサンプルの分析など、健康被害の原因究明を進めている。ただ、原因物質や混入した経路を突き止めるのは「想像以上に難しい作業」(同省幹部)になりそうだ。
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 厚労省は、小林製薬の調査で見つかったプベルル酸を原因物質だと決めつけず、国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)でさまざまな時期に製造された原料を「網羅的に探索する」としてきた。本来サプリに入っていないはずの成分を調べる作業だ。19日の中間発表では、プベルル酸のほかに、複数の物質を検出したが特定できていないと公表した。「自然界には知られていない物質も多い。非常に難しい作業だ」と、谷口亜樹子・東京農業大教授(食品科学)は解説する。
 今後はプベルル酸などの人体への影響を調べる「毒性試験」も本格化するとみられる。マウスに継続的に投与するなどして毒性を調べるもので、少なくとも数カ月の時間を要する可能性が高い。
 原因物質を特定した後には、なぜ混入したのか解明する作業が待ち受ける。
 原料を製造した大阪市の工場では、厳格な製造管理が行われていなかった可能性までは浮上している。大阪工場は第三者機関による品質・衛生管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証を取得していなかった。厚労省が健康食品の安全性確保のため、「取得することが望ましい」としている基準だ。
 実際にトラブルも相次いで判明している。同工場では、紅こうじ菌の培養タンク内に、タンクを温める温水が混入したことがあった。また今回のサプリには使用していないものの、いったん床にこぼれた材料を床に接触しない部分だけすくい取って出荷していたこともわかっている。
 原因物質の混入は結局、なぜ起きたのか。同工場は老朽化などで昨年12月に閉鎖されている。厚労省は3月に食品衛生法に基づき、同工場などに立ち入り検査を実施したものの、製造設備も残っていなかった。厚労省幹部は「製品から(原因を)追いかけるしかない」と頭を抱える。