保育士「新基準」のあおりで「保育士が足りない」 受け持てる園児数が減ったから 関連621施設調査(2024年4月20日『東京新聞』)

 
 
 「保育士が足りない」という不安を抱えて新年度を迎えた認可保育所などが約2割あったことが、保育関連企業の調査で分かった。こども家庭庁は4月、保育を手厚くしようと、保育士1人が受け持つ最大園児数を減らすよう配置基準を改め、その分多くの保育士が必要となった。同庁は今後、実態を調べる方針だ。

 保育士配置基準 児童福祉法に基づく「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」などで、保育士1人で子どもを何人受け持っていいかを示している。基準を下回らない範囲で都道府県などが定めた条例に従い、市区町村などが認可保育所の設置や指導監督に当たる。基準違反を繰り返し、改善しない場合は認可取り消しもあり得る。

 

外で遊ぶ幼児(資料写真)

外で遊ぶ幼児(資料写真)

 調査は、保育所向け写真販売サービスを展開する企業「千(せん)」(東京都千代田区)が1月にインターネットで実施。サービスを利用する全国の認可保育所など621施設が回答した。
 新基準では保育士1人が受け持つ3歳児は最大20人を15人に、4~5歳児は30人を25人に減らした。調査では、新基準に見合う保育士がそろっている施設は70.9%で、4月から変更予定としたのは8.7%だった。約2割の19.2%は、新基準への対応見通しが立っていないと答えた。国の配置基準の見直しには88.6%が賛成した。
 自由記述では「配置基準の見直しには賛成だが、不十分」「人材確保と賃金向上へのてこ入れを」との声が寄せられた。「保育士をどう確保し、保育の質を維持するかが課題」との意見もあった。
 
 政府は昨年12月に閣議決定した「こども未来戦略」で、4~5歳児は76年ぶりとなる基準見直しを示した。急な保育士の確保は難しいとして「当分の間は従前の基準で運営することも妨げない」との経過措置を設けた。こども家庭庁保育政策課の担当者は、配置の改善状況を把握する予定とした上で「保育士の確保や処遇改善を引き続き進める」と話した。(奥野斐)