保育士を「コマ」呼ばわり、パワハラ理由に大量退職 堺市の認定こども園、運営困難に(2024年3月14日『産経新聞』)

 
「あいあい浜寺中央こども園」で開かれた保護者説明会は夜遅くまで続いた=13日夜、堺市西区(岡嶋大城撮影)

0~5歳児クラスの園児約160人が在籍する堺市西区認定こども園で、保育士の大半が4月末までに退職する意向を示し、運営の継続が困難になっていることが14日、分かった。園を運営する社会福祉法人の幹部によるパワハラなどが理由という。堺市では、転所を希望する保護者をサポートする考えを示している。

問題が起きたのは、堺市の幼保連携型認定こども園「あいあい浜寺中央こども園」。

複数の園の関係者によると、運営元の社会福祉法人「森の子ども」の宮下鉱二理事長(47)の母親で「会長」と呼ばれる女性が、保育士に対しパワーハラスメント的な言動を繰り返していたという。

この女性は保育士のことを「コマ」と呼んでいたほか、職員らが何度も人手不足を訴えたのに、改善しようとしなかったとされる。その結果、正規雇用の保育士12人のうち10人が、4月末までに退職する意向を示している。

園では保育士を補充する方針だが、早期に規定数を確保することが困難で、規模を縮小して運営せざるを得ない状況という。今後、在園児には別の保育所などへの転所を促すほか、4月以降の新たな入園を制限する考えなどを示している。

宮下理事長は取材に対し「このような事態になってしまい申し訳ない。人員確保、立て直しに向けて頑張る」と話した。

取材に応じる「あいあい浜寺中央こども園」の宮下鉱二理事長=13日午後、堺市西区(木津悠介撮影)

堺市幼保推進課は「今後、園の運営継続とともに、転所を希望する保護者を支援していきたい」としている。

新年度まであと2週間余り…「会長」姿見せず

堺市認定こども園で起きたパワハラ騒動。保育士の大量退職が保護者に伝えられたのは、進級や入園のタイミングとなる新年度まで3週間を切った今月11日だった。園側は12、13両日の夜に保護者説明会を開いて経緯を説明したが、騒動の発端となった「会長」の女性は姿を見せず、急遽(きゅうきょ)子供の転所を迫られる形となった保護者からは怒りの声が漏れた。

「まさに寝耳に水。子供の転所先が簡単に見つかるわけでもなく、何てことをしてくれたんだという思いだ」

 園に2人の子供を通わせる30代男性は憤る。

 13日夜の説明会で配布された文書には、運営法人の宮下鉱二理事長名で、保育士の大量退職の原因について「現会長からのパワハラ的な言動等が根底にある」と記載。早急に役職を解く方針が示されたものの、「体調不良」を理由に女性は説明会を欠席した。

 午後7時に始まった説明会は約3時間にも及んだ。会場の保護者からは女性の欠席に対する非難が渦巻いた一方、園長ら現場の職員には「あなたたちは悪くない」といった声が上がった。

 説明会の終了後、取材に応じた保護者の女性は「(人員不足の解消を求める)先生の声が握り潰されたと思うと、とても悲しくてつらい。何も知らなかったこと、できなかったことがただただ悔しい」と語った。(調査報道班)

 

大阪 こども園で保育士が一斉退職へ 園児受け入れ困難のおそれ(2024年3月14日『NHKニュース』)

大阪 堺市にある認定こども園で常勤の保育士のほとんどが今月末で一斉に退職の意向を示していることが市や園への取材で分かりました。市と園は子どもたちの受け入れが難しくなるおそれがあるとしています。

保育士が一斉退職の意向を示しているのは堺市西区にある認定こども園「あいあい浜寺中央こども園」です。

園によりますと、園長を含む常勤の保育士12人のうち園長を含む10人が今月末で一斉に退職する意向を示し、園を運営する社会福祉法人に退職届を提出したということです。

保育士らは、運営法人の一部の役員によるパワーハラスメントなどの不適切な対応があり、子どもたちを預かる環境が整えられていないと訴えているということです。

運営法人は13日と12日、保護者向けの説明会を開きました。

市や園によりますと、来月以降の新年度も120人余りの園児が継続して通うことになっていたほか、新たに19人が入園を予定していましたが、市と園は、子どもたちの受け入れが難しくなるおそれがあるとしています。

市は園に対して保育士に勤務を続けてもらうため話し合うよう求めるとともに、保護者に対して転園の希望を受け付けるなどの対応を取っているということです。

園の運営法人「森の子ども」の宮下鉱二理事長は、NHKの取材に対し「このような事態に至ってしまったことに対して保護者の方には申し訳ないという思いです。子どもへの影響をできるだけ少なくして、人員を確保し立て直しを図りたい」と話しています。

堺市は「行き場を失う子どもが出ないようサポートしたい」としています。

退職届出した保育士 これまでの経緯について説明
退職届を出した保育士の1人はNHKの取材に対して園では以前から一部の役員によるパワーハラスメントがあり、退職者が後を絶たなかったと証言しています。

慢性的な人手不足が続いていて、保育士たちは園を運営する社会福祉法人に職場環境の改善と新たな人材の確保を求めたものの問題は解決されなかったということです。

この保育士は「園はただ子どもを預かればいいのではなく、安心、安全に預かる責任があると思っています。パワハラも退職の理由ではありますが、今の人員では子どもたちを守ることができないと考えました」と話していました。

また、12日行われた説明会に参加した保護者によりますと、説明会には退職する意向の保育士も出席し、これまでのいきさつを話したということです。

説明会で保育士は「かわいい子どもたちや温かく見守ってくれた保護者のために『もう1年頑張ろう』とみんなで力を合わせて頑張ってきました。保育士が足りずいつ子どもたちに危険が及ぶか分からないと声もあげてきました。それでも人材が確保されることはなく、大切な子どもたちに別の施設で安全な保育教育を受けてほしいと考えみんなで退職を申し出ました」と述べたということです。

説明会に参加した父親「子どもたちもかわいそう」
13日夜、園で行われた保護者向けの説明会は深夜まで及びました。

説明会に参加した父親は「保育士のほぼ全員が辞めると聞きました。不安しかないですし4月からどうすればいいのか分かりません。転園は簡単ではないし、子どもたちもいきなり違う環境に適応できないと思うのでかわいそうです」と話していました。

説明会に参加した母親「『なぜこの時期』不安しかない」
説明会に参加した母親は「現場の先生たちには感謝していますし、何の不満もありませんが、運営していた側に対しての憤りはあります。こういう事態になる前に早く手を打ってほしかったですし、3月の保育園の選考が終わっている中での発表で、『なぜこの時期なんだ』という気持ちです。別の保育園にすぐに入れるわけではありませんし、気持ちが追いつかずどうしたらいいのかという不安しかありません」と話していました。

新年度間近に控える中 急な対応迫られることに
堺市によりますと、このこども園がある堺市西区では、ことし2月15日現在、ほかの認定こども園保育所などの空きが270人余りあるということです。

市は、保護者から希望を聞きながら転園の手続きを進めていますが、新年度を間近に控える中で保護者や子どもたちは急な対応を迫られることになります。

子どもによっては希望する施設に入れずに西区以外の離れた場所にある預け先を探すことになる可能性もあるということです。