◆過去には多額の「国境税」要求
米国でEVの販売競争を勝ち抜くには現地化が不可欠だ。22年成立のインフレ抑制法は、北米での車両や電池の生産などを条件として、EV購入者に最大7500ドル(約114万円)を補助すると定める。EVブームの陰りも指摘されるが、バイデン政権が続く限り、こうした政策への対応を求められる。
一方、「米国第一主義」を掲げて返り咲きを狙うトランプ前大統領は、EVが米自動車産業を「殺す」と訴える。大統領就任直前の17年1月には、旧ツイッター(現X)でトヨタのメキシコ新工場建設について「工場を米国内に建設しないなら多額の国境税(関税)を支払え」と要求。トヨタは工場建設計画を変更しなかったものの、米国に5年間で総額100億ドルを投資する計画を打ち出すなど対応を迫られた。
◆累積投資7兆円、地域の人材育成も
社内では、米国市場が政治に翻弄(ほんろう)される状況を「今に始まったことではない」(同社幹部)と冷静に受け止める。貿易摩擦でジャパンバッシングが吹き荒れた1980年代半ば以降、トヨタは一貫して現地生産を強化。米国での累計総投資額は457億ドル(約6兆9900億円)と群を抜き、4万9000人の雇用を支える。度重なる急激な環境規制の変更にも対応してきた。
また電池工場を新設するノースカロライナ州では、地域の理系人材育成を支援するため、200万ドル(約3億600万円)の寄付も打ち出した。同州は大統領選の結果を左右する激戦州だが、あるトヨタ関係者は「どちらが勝てば100%有利、不利という話ではない。やるべきことは変わらない」と語った。
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